もくじ
病歴・就労状況等申立書とは
病歴・就労状況等申立書は、障害状態を確認するための補足資料として、障害年金を申請する際に必須の書類です。
医師の作成する診断書と重複する項目もありますが、こちらはご自身やご家族の認識している日常生活や就労・通院歴などを請求者(またはその代理人)が記入します。
本ページでは、日本年金機構のWEBサイトで配布されている入力用のデータを元に、基本的な書き方について解説します。
なお、配布されているエクセルについては、うまく動作しない場合があるため、当社で修正版を作成しました。
下記にダウンロードリンクと、解説をご用意していますので、ご利用ください。
また、当社では病歴状況については「別紙」にしています。
サンプルをご用意していますので、必要に応じてそちらも参考にしてください。
申請への高いハードルのひとつ
病歴・就労状況等申立書を書くのが難しいという方はとても多いです。
発病から現在までの通院歴・就労状況・生活状況・障害の状態を思い出し、順序立てて十分な情報を簡潔に詰め込まなければならないのは、障害を抱えた方にはかなりの重労働です。
特に精神障害は、障害年金の申請までに長い通院期間がある方が多く、情報が複雑になりがちです。
さらに発達障害や知的障害など生まれつきの障害がある方は、生まれた頃から書かなければなりません。
そこで、本ページでは病歴・就労状況等申立書の書き方の基本的なポイントについてご紹介します。
さらに細かいポイントについては、別の記事で解説しています。
書き方の基本(表面)
病歴・就労状況等申立書の表面には、傷病名、発病日、初診日、通院歴や生活状況などの病歴状況を記入します。
枚数
右上の「No. – 枚中」には、病歴・就労状況等申立書が複数枚になった場合に記入が必要です。
合計2枚となった場合は、1枚めに「No.1 – 2枚中」 、2枚めに「No.2 – 2枚中」 と記入します。
なお、2枚め以降は、同一の用紙ではなく、続紙に記入します。
傷病名
傷病名には、障害年金を請求する傷病として、基本的には現在の診断書と同じ傷病名を記載します。
「双極性障害」を躁うつ病、「心因性うつ病の単発エピソード」を心因性うつ病などとする分には問題なく処理される可能性が高いですが、なるべくそのまま写すことをおすすめします。
発病日
発病日も、基本的に現在の診断書と同じ日を記載します。
記入欄が年月日になっていますが、例えば診断書に「平成29年2月頃」と書かれていれば、「平成 29 年 2 月 頃 日」と記入して構いません。
知的障害、発達障害の場合は原則的に出生日が発病日になります。
初診日
初診日も発病日と同じように現在の診断書と同じ日を記載します。
初診日も同様で、診断書に「平成29年2月頃」と書かれていた場合は、「平成 29 年 2 月 頃 日」と記入して構いません。
知的障害の場合は、原則的に出生日が初診日となります。
この場合は、診断書の初診日と一致しなくても問題ありません。
病歴状況
記入は発病から現在まで、間を開けずに記入します。発病後一時的に回復し、通院を行っていなかったとしても、飛ばさずにその旨を記載してください。
また、知的障害の場合は必ず出生から記載します。
発達障害の場合も、幼少期から傾向が見られた場合は、出生から記載してください。二次障害としてうつ病を発症し、うつ病を主な傷病として申請するといった場合は、うつ病の発症の頃から記載します。
当社では記入欄のサイズにとらわれずに、障害の状態をしっかり記載するため、病歴状況については別紙で提出しています。
この項目は、一般的な書き方のご紹介です。
期間の区切り方
大枠に1~5と番号が振られていますので、この数字ごとに期間を区切って記入します。
出生時から書く場合、転院回数が多い場合、病歴が長い場合など、1~5に収まらなかった分は続紙に同じように記入していきます。あるいは、当社のように別紙としてもいいでしょう。
- ①3~5年ごとに区切る
- まず基本として、期間は3~5年ごとに区切ります。
出生時から記載するのであれば、就学状況に併せて、出生~入園前/幼稚園・保育園/小学校/中学校/高校/大学・専門学校などといった形で区切るのが分かりやすいです。
中学・高校にあまりエピソードがない場合は、6年でまとめてしまってもいいでしょう。 - ②医療機関ごとに区切る
- 医療機関が変わったら、たとえ1回きりの受診であっても区切ります。
その場合は、次に医療機関にかかる前日までをひと区切りとして構いません。
受診していた期間は、通院期間・受診回数・入院期間・治療経過・医師から指示された事項を記載します。 - 転医したり受診中止をした場合はその理由、日常生活状況、就労状況などを記入してください。
受診していなかった期間は、その理由、自覚症状の程度、日常生活状況、就労状況などについて具体的に記入します。 - ただし、通院の中断期間が5年を超えるような場合は、「通院なし」の期間で区切る必要があります。
なお、通院の中断が5年を超えるケースは「社会的治癒」の援用により、受給資格や受給額が変わってくるケースがありますので、一度確認されることをおすすめします。 - 例
A病院:平成29年2月19日初診・終診
B病院:平成30年3月10日初診
の場合、平成29年2月19日~平成30年3月9日をひと区切りとして記入します。 - 同じ医療機関に長く通っていた場合は、①のルールに従って、3~5年で区切ります。
入院などの大きなエピソードがある場合は、そこで区切ると分かりやすいかもしれません。
- ポイント
- 令和2年10月から20歳前傷病の方のうち、下記に該当する方は記入の一部を簡素化できるようになりました。
- ① 生来性の知的障害(精神遅滞)の場合は、1つの欄の中に、特に大きな変化が生じた場合を中心に、出生時から現在までの状況をまとめて記入することが可能です。
- ② 2番目以降に受診した医療機関の証明書を用いて初診日証明を行った場合は、発病から証明書発行医療機関の受診日までの経過を、1つの欄の中にまとめて記入することが可能です。なお、証明書発行医療機関の受診日以降の経過は、通常どおり、受診医療機関等ごとに、各欄に記載を行ってください。
厚生労働省「請求者の負担軽減のための障害年金に係る業務改善等について」
例えば、上図のB病院に証明書を発行してもらい、受診日から障害認定日が20歳到達日以前であることが確認できれば、A病院については証明不要、病歴状況も区切る必要ないということになります。
B病院以降にあたるC病院については、従来どおりの記載が必要です。
書き方の基本(裏面)
1.障害認定日と2.現在(請求日頃)のどこに記入すべきか
障害認定日にすぐ請求する場合
認定日と提出日が1年以上離れていない場合は、「1.障害認定日」のみの記入で問題ありません。
「2.現在(請求日頃)」の欄についている「障害者手帳」の欄の記入漏れにご注意ください。
提出する診断書も基本的に認定日から3か月以内のもの1枚だけです。
なお、年金事務所の受付日が1年を超えてしまうと、遡及請求となりますのでご注意ください。
遡及請求をする場合
障害認定日に障害年金のことを知らなかったなどの理由で、障害認定日から遅れて認定日請求することを遡及請求といいます。
この場合は、「1.障害認定日」「2.現在(請求日頃)」の両方に記入します。
遡及請求では提出する診断書は障害認定日と現在の2枚となるのが基本です。
事後重症請求をする場合
障害認定日の状態が軽かった、廃院で診断書を書いてもらう先がないといった理由で、認定日を過ぎたあと、現在の状態のみで請求をすることを事後重症といいます。
この場合は「1.障害認定日」の記入は不要で、「2.現在(請求日頃)」のみ記入します。
提出する診断書は現在の1枚が基本となります。
就労状況
職種(仕事の内容)
システムエンジニア・フィットネストレーナーなど職種を書くだけでおおよその仕事の内容の検討がつくものでも、どういった会社でどういった仕事をしていたかを書きます。
仕事の内容が分かりづらい職種は簡単に仕事の内容も書いておきましょう。
学生で通学をしていた場合もここに記入します。
例)ソフトウェア開発会社でシステムエンジニア、ジムでフィットネストレーナー、機材リース会社で各社への訪問営業など
1日だけ出勤してみたものの、次の日からもう出勤できなかったような、「就労している」と言えないようなものは、記載を省いても問題ないでしょう。
また、籍を置いていても休職・休学していた場合は、「就労していない」の方に記入します。
通勤方法・通勤時間
ここでいう通勤方法は、主に交通手段を指しています。徒歩・電車といったことを記入してください。
「電車に乗れなかった」とどこかに書いていて、ここに電車通勤と書いてあったら矛盾とされてしまいます。
1駅だけだったとか、たまにということであれば、電車(3分)とか、バス(空席の多い帰りのみ)などと補足を書いておいてもいいでしょう。
通勤時間は片道ですので注意してください。
また、混雑時のバスなど、実際には毎日遅延するような交通機関でも、基準となる時刻表の時刻に従って記入するのが一般的です。
インターネットの路線検索を使うと便利です。
出勤日数
出勤した日数、学生であれば出席した日数を書きます。
もし、「行きはしたものの、まともに作業ができなかった」というようなことがあれば、日数だけで判断されてしまわないよう、病歴状況や仕事中や仕事が終わった時の身体の調子についてで補足しておくのがいいでしょう。
仕事中や仕事が終わった時の身体の調子について
仕事や授業に集中できない、仕事が終わると疲れ果てて動けないといった不調があるなら、必ず記入してください。
不調については、診断書にも書いてもらえるのが理想です。
仕事をしていない(休職している)理由
退職したまま再就職していない場合、籍を置いていても休職・休学している場合はこちらに記入します。
医師から休職・退職を進められていた場合は、「イ 医師から働くことを止められているから」を選択していいでしょう。
「怖くて外出できない」「寝たきりで動けない」といった理由であれば、「オ その他」を選択して理由の欄に記入します。
日常生活状況
ここでいう援助とは、直接的なケアだけを指しているものではありません。
例えば入浴時であれば、髪を変わりに洗ってもらっているというよう場合はもちろん、着替えを用意するといった間接的なサポート、自分で入浴のタイミングが判断出来ない場合に「今、お風呂に入りなさい」と促すことも該当します。
日常生活状況は診断書にも類似項目があります。
診断書の生活状況の情報と大きなズレがあると、申立書としての信頼性が下がってしまいますので、受給したいからと言って虚偽の情報を記載することはやめましょう。
もし、診断書のほうが軽すぎると感じるのであれば、提出前に医師に相談してください。
その他日常生活で不便に感じていること
着替え、トイレ、食事、炊事などの上記項目に該当しないような日常生活で困っていることがあれば、ここに記入します。
外出できない、他人とコミュニケーションが取れないといったことも、日常生活の困難のひとつと言えます。
障害者手帳
障害者手帳(身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・その他)を持っている場合は、この欄に記載します。
この欄は「2.現在(請求日頃)」の項目と一緒になっていますが、「1.障害認定日頃」のみ記入する場合でもこちらの欄に記入して問題ありません。
申立者
請求者
請求者の住所には、依頼者の現住所を記載します。住民票などと違う場合は注意してください。
また、ご本人以外が記入した場合は、押印を忘れないようにしましょう。
代筆者
代筆者の続柄は、請求者から見た立場になります。
お子さんの代筆をした場合は、父または母と書くことになります。
まとめ
本ページでは病歴・就労状況等申立書の基本的な書き方についてご紹介しました。
最初にも述べましたが、病歴・就労状況等申立書の作成は、大きな負担です。
書けないせいで提出が延びてしまうより、代行を依頼して早く受給したほうが金銭的に負担が少ないこともあります。
もし、ご自身での作成が難しいと感じる場合は、社労士への相談をおすすめします。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士