20代女性(神奈川県藤沢市在住)
- 傷病名
- 難治性てんかん
- 受給できた年金
- 障害厚生年金2級
- 受給金額
- 年間約110万円
ご依頼までの経緯
ご依頼者は、10代の頃から発作が発生していたものの、てんかんだとは分からず、病院にかからないまま就職されました。
しかし、仕事中にもたびたび発作が起き、日常生活にもかなり問題が発生するようになったため、脳神経外科を受診。服薬を開始し、配慮を受けながら仕事を続けていましたが、仕事に影響するような発作が収まることはなく、退職に至りました。
その後も服薬の効果はなく、発作の頻度はさらに増え、日常生活もままならなくなっていきました。
当社にご相談いただいた時点での発作頻度は、月50回に達し、発作がいつ起こるか分からないため、お一人での外出等は全く出来ない状態でした。
当然、就労もままならず困っていたところ、障害年金を知り、当社にご依頼をいただきました。
当社での対応
てんかんでの請求の問題点
はじめに、てんかんの認定は他の精神疾患に比べて難しい傾向があります。
てんかんは、ICD-10コードではG40-41であり、「神経系の疾患」であるにもかかわらず、障害年金の請求では精神障害用の診断書を使用します。
また、本来てんかんは新ガイドラインの対象外ですが、実際のところ日常生活状況も診査の対象になっていると思われる結果が散見されています。
しかし、てんかん発作が起きていないときは身の回りのことができている方が多いので、診断書の「日常生活能力の判定」および「日常生活能力の程度」欄は他の精神疾患に比べて軽くなりやすい傾向にあります。
このように、てんかんの重さを適切に反映できない診断書が用いられていることが、てんかんの障害認定を著しく困難にしています。
3級非該当の診断書が届く
先述のような事情があったため、診断書の作成を依頼する際に、発作間欠時だけではなく発作時も含めて日常生活能力を判断いただくよう、医師にお伝えしました。
しかし、作成いただいた診断書をみると日常生活能力の判定は約1.3、程度は(2)で、障害等級の目安に当てはめると「3級非該当相当」でした。
改めて、医師に発作時も含めて日常生活能力を判断いただけるか確認しましたが、ご再考いただけませんでした。
独自の申立書を作成
類似のケースで争われた平成25年5月23日名古屋地裁判決を見てみると、てんかんの診断書の日常生活能力の判定・程度欄が空欄であっても認められていることが分かりました。
その理由は、てんかんを審査するにあたっては日常生活能力の判定・程度は重要ではなく、「発作の種類・頻度」や「ご家族の申し立て」が判断基準になるからというものでした。
改めて診断書を見てみると、てんかん発作のタイプが「A」で、てんかん発作の頻度が「週平均15回程度」と記載されていました。
てんかん発作のAは、「意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作」を指します。
改正認定基準によると、てんかんによる障害で2級に相当すると認められるものの例示として、「十分な治療にかかわらずてんかん性の発作のA又はBが年に2回以上、もしくはC又はDが月に1回以上あり、かつ、日常生活が著しい制限を受けるもの」と記載されていますが、ご本人の状態はこれを遥かに上回るものです。
加えて、できるだけ詳しく発作時の様子や、発作により日常生活が著しい制限を受けていることをご本人からヒアリングし、病歴・就労状況等申立書に記載いたしました。
最後に、当該判決や改正認定基準をまとめた任意の申立書を作成し、診断書の日常生活能力の判定・程度欄ではなく、「発作の種類・頻度」や「申し立て」で判断いただくよう記載いたしました。
結果
診断書の「日常生活能力」は3級非該当に相当する値のままでしたが、発作の頻度などが認められ、障害厚生年金2級が決定しました。
当事例と同様に、てんかんの方の場合、日常生活能力欄が軽い診断書が作成されることは珍しくないと思います。
ですが、発作のタイプや頻度によっては、しっかりと申し立てを行うことで、認定される可能性はあります。
このような場合には専門家に一度ご相談いただいくことをおすすめします。