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今後求められる精神保健福祉士の専門性

公開日:2022/01/28
  最終更新日:2022/02/01

課題:今後求められる精神保健福祉士の専門性について述べなさい

規定文字数:2000字
本文文字数:2200字

精神保健福祉士とは、精神障害者に対しての、幅広い社会的シーンを想定した地域移行援助と継続、また、それに伴う人権擁護にも及ぶ専門職であり、我が国の法令のもとに委託を施行できる国家資格でもある。さまざまな社会問題と価値観が混在する21世紀において、国家・人種・性別・年齢などあらゆる境界線を越えた、多くの人々が重視している健康な心理状態、良好なメンタル面を維持し続けることは、現代の社会動向を見据えてもその成立目的は極めて意義あるものとされる。人の生涯にわたり勘案されるべき、医療や福祉において今後の最重要事案となるであろう、メンタルヘルス課題は社会病理の根幹と深く関連付けられる。同課題は、病院を主体とする医療機関内、介護的施設内における範疇と捉えるのではなく、あくまでも地域性との関連が重視される。精神障害者が可能な限り円滑に、経済面・心理的に負担なく、地域生活を継続することを主旨とした支援領域に加え、新たに浮上する諸問題に対しても、従前の医療や医学の在り方だけでの対応は不可能である。その問題をあがなうべき存在の精神保健福祉士へのニーズは、今後もあらゆるシーンで高まる傾向にある。その理由として、医師・看護師・保健師・産業医、臨床心理士・教師・スクールカウンセラー、必要に応じて社会福祉士・介護福祉士・ケアマネジャー・社会保険労務士などとの多専門職種連携協働がある。そのなかで個々のクライエントの福祉的解決課題に対し機関内外を問わず、精神保健福祉士がその専門性のひとつである、マネジメント力を持って対応すべきことは多岐にわたるからである。さらに、連携範囲拡大、また精神保健福祉士そのものが取り扱う業務範囲拡大の可能性も、十分にあり得る。そのため、今後さらなる専門性の習得や、実践対象範囲の広がりも想定されなければならない。より、その専門性を求められる、メンタルヘルス課題が及ぶ代表的事例は、以下に集約される。

●いじめに代表される学童期・思春期の不登校
●コミュニケーション問題などに代表される青年期の引きこもり
●自傷・自死問題対応
●諸問題の逃避からのアルコール・薬物・ギャンブル依存症への発展
●精神障害に伴う経済的困難問題
●高齢単身者における社会的孤立、その同一線上としての孤独死
などは、ライフサイクル上における、単発的毎に生じて収束解決されるものではなく、一連する課題として捉える必要性がある。

また、家族間の諸問題においては、
●妊産婦の周産期精神障害
●夫婦間のドメスティック・バイオレンス
●その発端となる産業的諸問題の背景、過重/超過労働・リストラ・非正規雇用条件に伴う社会/経済的要因の精神障害
●以上の延長上となる子どもへの虐待
●虐待を受けた子どもの心理面影響
●虐待を行う親自身が、かつて虐待を受けたケースが多く認められる世代連鎖問題

そのほか、
●高齢化社会に伴う認知症増加は、社会的入院・介護うつ病・介護虐待・老々介護・介護難民など新たな社会問題を誘発する
●発達障害児の対人関係複雑化に伴う社会適応困難
●頻発する大災害や、長期避難生活によるストレス
●アルコール・薬物・ギャンブル等の嗜癖しへき性障害
などの社会的課題も対応範囲とされる。

以上の個々の当該クライエントに対し、精神保健福祉士は関与と支援を行いつつ、その実際問題に際して、真に必要な社会的視点から、環境改善への発端となる意見を述べることが可能とされる。従って、一部の表面化された問題ではなく、社会の影の部分として全体像を俯瞰ふかんしつつ諸問題の根底にある、社会的に解決すべき共通課題を察知・把握し、掘り起こすべき課題の顕在けんざい化も可能とされる。それこそが国家資格保持者・ソーシャルワーカーとしての精神保健福祉士に、真に求められる今後の専門性であり、その存在価値を意義とするひとつといえる。

また、精神保健福祉士の業務として
1.多専門業種連携に基づく支援相談
2.実践的マネジメント
3.継続支援
という3つの柱の相互関係性をより強めつつ、それぞれの事案に対する専門性をさらに累積構築していくことが期待される。

なお、2014(平成26)年度の厚生労働省の統計情報によると、精神障害者として医療機関により統計可能であった患者数は、約392.4万人。2016(平成27)年度に障害福祉サービス等を利用した精神障害者数は、約16.9万人。2017(平成29)年度の精神保健福祉手帳交付数は約99 .1万件という値からも、今後も社会的支援ニーズの高まりは必至である。精神保健福祉士の重要性、並びに質と量の担保の両側面から、より専門性の高い人材育成・輩出が急務と認識できる。

以上のことから精神保健福祉士に必要とされる自己研鑽けんさんは、職業的人生における成長・発展を常に追求し続ける生涯研修として認識されるべきである。国家資格取得時点において、専門性を構築するために検討された養成教科課程であるとしても、社会福祉分野における専門職が完成形となるべくもない。従って、肝要なのは、その後の実社会において、精神障害者のあらゆる問題点に向き合い、寄り添い、最良の解決策を講じつつ、目的に向った”たゆまぬ勉学への努力と実践行動力、その経験値の積み重ね”こそ、がもっとも重要であると考える。それらをもって始めて、本来目指すところの成立背景となった国家に替わり”時代に即したタイムリーな、社会的専門性使命を果たす”ものとなると考察するに至る。

参考文献

  • 参考文献:
    厚生労働省
    精神保健福祉士に求められる役割について 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 柏木一惠 第2回精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会 平成31(令和元)年2月25日 参考資料3-6/7頁 
    URL/https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000488346.pdf

    ●医療機関における精神保健福祉士の役割(抜粋)
    受療/受診相談・危機介入・心理社会的アセスメント・入院中の相談支援 ・外来通院中のフォロー ・退院支援・集団支援(デイケア、集団療法等) ・居住支援・経済的問題支援・家族問題支援 ・就労/就学支援(復職・復学含)・日常生活支援・家族教室/家族心理教育 ・社会参加と活動への支援 ・患者と家族の支援と権利擁護・他科の受診受療相談
    ・機関内多職種ケアチームへの参画
    ●チーム医療に福祉的支援の立場から参画(抜粋)
    人権擁護の観点から精神保健福祉法 等遵守のための情報提供 ・看護師等と協働した訪問支援治療計画/退院計画への参画 など。
    機関内多職種ケアチーム への参画(抜粋)
    関係機関/関係者との連携/協働による患者支援・ボランティアの育成支援・障害福祉計画策定等への参画・精神医療審査会/障害程度区分認定 審査会等への参加
    ○参考文献/出典引用元:
    厚生労働省
    精神保健福祉士に 求められる役割について 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 柏木一惠 第2回精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会 平成31(令和元)年2月25日 参考資料3-6頁 

    ●精神科チーム医療の具体例 (抜粋)
    ・精神科病院におけるチーム医療(3)認知症医療など
    ・虐待防止に関するチーム医療
    ・自殺未遂者ケアに関するチーム医療
    ・アルコール依存症等への取り組みに関するチーム医療
    ・医療観察法における役割
    ⇒精神科医療のさまざまなチーム医療において精神保健福祉士(ソーシャルワーカー)のチーム構成員としての関わりが求められている。
    ○参考文献/出典引用元:
    厚生労働省
    精神保健福祉士に 求められる役割について 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 柏木一惠 第2回精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会 平成31(令和元)年2月25日 参考資料3-7頁

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