もくじ
失業手当の特徴について
正式名称は、「雇用保険の基本手当」といい、一般的でないためこの記事では「失業手当」で統一します。ほかにも「失業保険」「失業給付」と呼ぶこともあります。
失業手当は、勤めていた会社を退職した方に対して、次の仕事が見つかるまでの経済的保障をしてくれる制度です。
比較的使いやすい制度ですが、失業手当を受給するには、以下のようないくつかの条件があります。
雇用保険に一定期間加入していたこと
失業手当を受給するには、働いていた会社で雇用保険に一定期間加入していたかどうかが求められます。
雇用保険は会社側が労働者に加入させることが義務となっています。
正社員だけではなく、パート勤務の社員でも以下の条件に当てはまっていれば、雇用保険に加入することになります。
- 週に20時間以上勤務している
- 社員が勤務を始めてから、31日以上継続して働く見込みがある
- 原則的に学生ではないこと
- 65歳以上でも、一定の条件を満たしている
さらに、雇用保険に加入していた場合でも、どのぐらいの期間加入していたかや退職理由による条件もあります。
例えば、自己都合退職の場合だと、雇用保険に失業日までの2年間のうち、12か月以上連続して加入しておく必要があります。リストラなどの会社都合の退職の場合は、失業日までの1年間のうち、6か月以上雇用保険に加入していれば受給が可能です。
再び就労する意思があること
失業手当は、退職後も経済的な支援がなされるありがたい制度ではありますが、「今後は転職して、働く意思がない」と思っている方は対象にはなりません。
あくまでも、再就職するための意欲があり、積極的に仕事を探しているかという点が重視されます。
そのため、28日のうちに2回以上ハローワークに通い、就職活動をしている旨を示すことが大切です。
ただし、失業手当は、就労する能力があると見なされることが重要となります。そのため、就労の意思があっても、しばらく働くことができないと思われる方などは、受給の対象にはなりません。
傷病のため働く能力が失われているとして受給する障害年金とは、性質が逆であることになります。
そのため、特に精神障害においては、失業手当と障害年金の同時受給は難しくなります。
双方の性質上難しいというだけで、禁止されているわけではないので、もし同時受給が認められた場合は減額などの調整なく受け取ることができます。
受給期間の延長制度
退職の翌日から30日以上職業に就くことができない場合は、失業手当の受給期間を延長することができます。
延長は最大で、離職日の翌日から4年以内です。
今までは、退職翌日から30日以上連続で仕事ができなかった日の翌日から1か月間しか申請期間がありませんでしたが、平成29年4月1日から延長後の受給期間の最後の日までは、申請可能になりました。
しかし、ギリギリになってしまうと給付日数分受給しきれない可能性が出てきますので、なるべく早めの申請をおすすめします。
失業手当の金額は個人によって違う
失業手当金は、対象となる方がどのぐらい雇用保険に加入していたかや年齢、収入などによって金額が異なります。
失業手当は、退職前6か月の給与(賞与は除く)÷180日で、受給金額の日額がおおよそどのぐらいか知ることが可能です。この日額を基準に、雇用保険加入期間や年齢で調整され、最終的な受給額が決まります。
直近6か月の月給の合計が150万円だとすると、1,500,000円/180日=8333.333…円ががおおまかな賃金日額となります。
賃金日額に給付率(80~45%)を掛けた金額が基本手当日額です。基本手当日額に給付日数を掛けた金額が、受給する失業手当の総額となります。
失業手当を受給できる期間は、雇用保険に加入していた期間や離職理由によって変わります。
失業手当は申請してもすぐにはもらえない
失業手当は会社を退職した後に申請しても、すぐにもらえるものではありません。初めて受給ができるまでには、待機期間などを経る必要があります。
待機期間なども個人の状況によって異なりますので、しっかりと覚えておきましょう。
自己都合退職の場合
自己都合で会社を退職した場合は、失業手当を申請してから退職後1週間の待機期間があります。その後、さらに3か月の給付制限期間を経て、初めて失業手当を受給できるようになります。申請してから受給できるまでの期間が、意外と長い点が特徴です。
ただし、傷病などを原因として退職し、特定理由離職者として認められた時は、3か月の納付制限期間が必要なくなります。つまり給付の開始が早くなるということです。特定理由離職者と認められるには医師からの証明が必須となりますので、注意してください。
また、障害を持っている方も就職困難者として、一般の対象者よりも失業手当の給付日数が増えることになります。
会社都合の退職の場合
会社の倒産やリストラなどで、会社側から退職を言い渡された場合は、失業手当の申請をしてから1週間の待機期間を経ると、失業状態であることが認定されます。その後、自己都合退職のように3か月の納付制限期間を待つことなく、失業手当の受給ができます。
失業手当の手続きの流れとは?
失業手当は退職し、待っているだけでは自動的に受給はできません。退職後に必要書類を揃えてハローワークに申請する必要があります。
失業手当の手続きについて、次にお伝えします。
離職証明書と離職票の提出
会社から離職票を受け取ったら、それを持ち、最寄りのハローワークの窓口へ行きます。その際に、証明写真や印鑑、身分証明書、マイナンバーカード、通帳口座(本人名義)も必要になりますので、忘れずに持って行きましょう。
- ポイント
- 離職証明書(雇用保険被保険者離職証明書)は企業側がハローワークに提出します。
なお、離職票は本来2週間程度で手元に届くものなので、遅れているようであれば会社またはハローワークに問い合わせてみましょう。
繁忙による遅延以外にも悪質な会社が、嫌がらせで送付をしないというケースもあります。
手続きが遅れるほど受給の開始も遅れ、不利益が出てしまうため、そういった場合はハローワークに申告しましょう。ハローワークで対応してもらえます。
雇用保険受給者の説明会への参加
ハローワークから日時が指定された場所にて、説明会に参加します。参加した際に、雇用保険受給資格者証と失業認定申告書が渡されますので、大切に保管してください。
決められた失業認定日に、ハローワークに行くこと
説明会参加後、失業認定日が決定されますので、4週間に1回の割合でハローワークを訪問することが求められます。その際に、求職活動の内容を窓口に報告し、失業の認定を受けましょう。
正当な理由なくこの日の訪問を行わないと、認定が行われず、その期間の失業手当を受け取ることができなくなります。
なお、本記事執筆の2020年7月10日現在、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、遠隔での失業認定を行っているハローワークがあります。
上記のような流れを経て、失業が認定されたら、1週間程度で指定した通帳口座に失業手当が振り込まれることになります。
再就職を目指し失業手当を受けるか、療養のため就労はいったん置いておいて障害年金の申請をするか、迷ったらまずは社労士へ相談してもいいかもしれません。
さがみ社会保険労務士法人の場合、失業保険についてはお手伝いできませんが、現在の状況を伺い、障害年金の受給見込みがどの程度あるかお答えすることが可能です。
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- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士