もくじ
障害年金の特徴とは?
障害年金は何らかの障害に陥り、日常生活に支障が出る方を対象に、経済的支援がなされる制度です。
障害年金には、1級~3級の等級があり、その程度によって受給金額が異なります。
また、障害年金の受給までには様々な要件をクリアしなければなりません。
心身の不調で病院を初めて受診した日から1年6か月を経ているか、その時点で障害だと認められる状態にあるか、初診日を含む前々月までに国民年金保険料を2/3以上納付しているかなどの条件が存在します。
一部例外があります
さらに、障害年金の申請が通ると、状態によっては年金を永久的、半永久的に受給することが可能です。
有期の場合は1年~5年ですが、障害が継続していれば更新もできます。
傷病手当金の特徴とは?
傷病手当金とは仕事上ではなく、それ以外の場で生じた傷病の影響で、労務が不能となった方を対象に、被保険者の生活を保障するために支給される、経済的支援制度のことを言います。
業務中あるいは通勤途中での病気・ケガは労働災害保険の取り扱いとなります。
また、よく似た名称の「障害手当金」とは別の制度です。
受給額は障害年金のように、傷病の程度で金額が決められるのではなく、個人の報酬によって決定します。
傷病手当金は原則的に、療養のために労務に服することができなくなった日から数えて3日を経過した日から、直近12か月の平均の標準報酬日額の2/3が支給されます。
これは給与が支払われなくなったときの保障であるため、休職していても勤めている企業が十分な給料を支払ってくれるのであれば、傷病手当金を受け取ることはできません。ただ、減額した給与が支払われており、それが傷病手当金より少ない場合にはその差額が支払われることになります。
また、申請が通っても、受け取れる期間は、通算で1年6か月までという区切りがあるので、気をつけてください。
障害年金と傷病手当金の違いについて
障害年金と傷病手当金の性質は似ている点がありますが、決定的に異なる点も存在します。
これを知っておくことで、各々の制度の意味がより理解できるようになりますので、覚えておきましょう。
傷病手当金は障害認定基準に当てはまらなくてもよい
障害年金は、申請する際に障害の状態にあるかどうかという、障害認定基準に当てはまっていることが必要となります。
精神疾患における障害認定基準は、世界保健機構(WHO)が提唱しているICD-10に定められている傷病の、決まった傷病名に該当するかどうかが重要になってきます。
対象となる傷病名が診断書に書かれていないと、原則的に障害年金の対象外となり、障害年金を受給することはできません。
一方、傷病手当金には障害認定基準に当てはまらなくてはならないという決まりはなく、傷病の影響で労務不能な状態だということが条件となります。
なお、労務不能であることは医師にって証明される必要となります。基本的に傷病手当金の請求書にある医師証明欄に記載してもらいます。
傷病手当金は健康保険・共済保険に加入している必要がある
初診日が20歳未満である場合を除き、障害年金を申請するには、一定以上国民年金の保険料を支払っている必要があります。
かんたんに言うと、一般の保険と同様で、保険料を支払っていない人には保険金が支払われないということです。
傷病手当金の場合は申請の時点で、健康保険・共済組合に加入していなければなりません。これは、傷病手当金の財源が健康保険・共済組合のため、国や勤め先ではなく、これらの保険組合から支給されるためです。
また、傷病手当金は健康保険・共済組合の被保険者が対象となり、被保険者に扶養されている人、国民健康保険の被保険者、 健康保険の任意継続被保険者は対象外となります。
傷病手当金は待機期間が異なる
障害年金は、初診日から1年6か月が経たなければ、申請することはできません。なぜなら、「傷病などの治療を続けたにも関わらず、障害が残ってしまった」という状態を判断するには、ある程度の期間が必要になるからです。
一方、傷病手当金は、傷病などで労務ができずに仕事を休んだ日から3日間が経過すれば、4日目より手当が支給されることとなります。
ただ、ここで注意すべき点は、連続して3日間仕事を休んでいることが条件となっていることです。
例えば、2日間休んで、3日目は出勤し、4日目から再度休んだにしても対象にはなりません。3日間の待機期間中に土日や祝日、有給などが入った場合は、休んだ日数にカウントできるので、連続して3日という解釈に含まれます。
3連休の1日目に病気にかかり、そのまましばらく療養が必要になった場合、3連休の3日間で待機期間が完成することになります。
その後、支給が決まると、以降の傷病による休み(土日やゴールデンウィークなどの連休も含む)が給付対象となります。
障害年金と傷病手当金は重複して受給はできない
障害年金と傷病手当金の受給は、重複することはできません。つまり、2倍の金額を同時に受け取ることは不可能なのです。
しかし、傷病手当金を受給しているうちに、障害年金申請の条件が整う方もいます。その場合は、障害年金を申請し、それが認められたら障害年金と傷病手当金の差額分を受給することができるようになります。
これは、障害年金と傷病手当金の併給調整と呼ばれます。
ただし、これは障害年金の受給日額が傷病手当金の受給日額より少ない場合に、行われるケースです。
一方、障害年金の方が傷病手当金より受給日額が多い場合は、傷病手当金の支給は停止され、障害年金の方が優先されます。
さらに、上記は障害厚生年金が受給できる場合の話でしたが、障害厚生年金ではなく、障害基礎年金のみをもらうことになった時は、傷病手当金も併せて両方を受け取ることができます。なぜなら、障害基礎年金は併給調整がなされないことになっているからです。
場合によっては障害年金の申請も視野に入れる
上記のように傷病によって働くことができない期間が長引けば、障害年金の申請も考える必要が出てくる時もあるでしょう。
その場合は、傷病手当金の受給満了である1年6か月を待たずとも、早めに手続きを行うことが大切です。
障害年金を申請するためには、多くの書類などを揃える必要がありますし、申請をしてから実際に年金が支給されるまで、早くて3か月程度はかかります。つまり、申請が遅れれば遅れた分だけ、経済的に困る事態が長くなってしまうのです。
障害年金の手続きは複雑なものが多いので、1人で対処できない場合は社会保険労務士などの専門家に相談することをおすすめします。そうすることで、抱えている悩みや苦労が軽減されることでしょう。
当社は障害年金の専門家であるため、傷病手当金についてはサポートはしておりません。
現在、障害年金を受給中で、傷病手当金の期限満了後に障害年金の受給を検討している方は、期限満了の半年ほど前から障害年金の申請をお勧めしています。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士