精神障害で就労が困難となった場合、経済的にも苦しくなることは珍しくありません。
本ページでは、精神障害を抱える方が利用できる、代表的な経済的な支援をご紹介します。
もくじ
障害年金とは
障害年金は、病気やケガによって生活や就労ができない、または制限された際に支給される年金です。
老齢年金は基本的に65歳からですが、障害年金は20歳以上65歳以下の早い時期からでも受け取れます。
障害の原因となった病気やケガのために医師の診察を受けた時点(初診日)で、国民年金に加入していた方は「障害基礎年金」。厚生年金に加入していた方は、障害基礎年金に上乗せして「障害厚生年金」が原則として適用され、障害等級の程度によって受け取る額が変わることとなります。
障害年金の対象者
障害年金を受け取るためには、以下の条件のいずれかを満たさなければなりません。
- 障害の原因となった病気やケガについて、初めての診察を受けた月の前々月までに、公的年金(国民年金)の加入期間の3分の2以上の保険料を納付している、または免除されていること。
- 初診日において65歳未満であり、その月の前々月までの1年間の間に公的年金の保険料を未納していないこと。
- 障害基礎年金の場合は、障害等級が1級または2級に該当すること。障害厚生年金の場合は、1級から3級のいずれかに該当すること。
生活保護とは
生活保護は、障害を含む様々な事情で経済的に困窮した人に対して、最低限の生活をするための保障をし、自立を支援する福祉サービスです。原則的に、世帯の人数や居住地などを踏まえた上で出された「最低生活費」から世帯の収入を引いた上での不足分が、支給額となります。
さらに、生活保護を受け取っている人に障害の認定がなされると、障害者加算を受け取ることができますので、忘れずに申請しましょう。
生活保護の対象者
生活保護を受け取るためには、まず世帯員全員が以下のような努力をする必要があります。
- 貯金を生活費に充てる
- 使っていない土地や家といったあらゆる資産を売却する
- 働くことができる人は就労する
- 利用できる給付制度を活用する
- 親族など扶養義務者からの援助を受ける
このような生活費を捻出するための手段を全てとった上で、収入が最低生活費を下回った際に、その対象となります。
障害年金との関係
生活保護は障害年金と同時に受給すること自体は可能ですが、両方を満額を受給することはできません。
財産についての扱いなども生活保護と障害年金では異なります。
また、先述の通り、障害があると認められた場合には、障害者加算を受けることができます。
申請の際は、障害年金の年金証書が手帳の代わりとして受理されることもありますので、お住まいの自治体にご確認ください。
傷病手当金とは
傷病手当金は、病気やケガによって働くことができないときに生活を支えるために、会社が加入している健康保険から支給されます。そのため、会社に勤めず自営業やフリーランスで働いている場合は、原則として傷病手当金は受け取れません。
なお、通勤中や業務中に発生した病気やケガは労災保険の対象となり、傷病手当金の支給対象外となります。
傷病手当金は、支給開始した日から最長で1年半支払われ、支給額は支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額の平均を30で割った額の3分の2です。
傷病手当金の対象者
傷病手当金を受け取るには、以下の条件を満たす必要があります。
- 病気やケガによって、仕事に就くことができないこと。
- 休職しており、会社から給与をもらっていない、または一定以上減額されていること。
減額された給与が傷病手当金の額より少なければ、その差額が支払われます - 病気やケガのために仕事を休んだ日から起算して連続で3日間休み、この3日を含んで、4日以上仕事に就けなかったこと。
障害年金との関係
障害厚生年金と傷病手当金の両方を同時に受給することはできません。
傷病手当金を受給しながら、障害年金の準備を進めていくといったことは可能です。
生活福祉資金貸付制度とは
生活福祉資金貸付制度は、障害者や高齢者、収入が少ない人に対して資金の貸付を行うことで、その生活を経済的に支えるための制度です。銀行などの金融機関での貸付に比べると金利は低く、利用しやすいのがメリットです。
この制度は、貸付を通して経済的に自立することや社会に参加することで、利用者が安定して充実した暮らしを送れるようになることを目的としています。
生活福祉資金貸付制度の中には、総合支援資金や福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金といった様々な資金の種類があり、内容や限度額がそれぞれ異なっています。そのため、自分に合った資金はどれなのかを調べてみることをおすすめします。
生活福祉資金貸付制度の対象者
障害者世帯への貸付の場合は、障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳)の交付を受けた人が世帯にいることが条件となります。
この制度はあくまで「貸付」ですので、返済の見込みがない場合は利用できません。
障害年金との関係
「総合支援資金」については、障害年金を受給している方は、障害年金の受給金額が少額であっても受け取ることができません。
その他の項目については、地域によって異なりますので、お住まいの地域の福祉協議会に問い合わせてください。
精神障害者保健福祉手帳とは
精神障害者保健福祉手帳とは、精神疾患がある方が取得できる手帳で、発行するかどうかは任意です。しかし、手帳を持っている人は、税金の優遇や公共料金の割引などの様々な支援を受ける機会が用意されているため、サービスを受けたい方は取得しておくのが望ましいと言えます。
手帳には、障害等級と呼ばれる区分が1級から3級まであり、等級によってサービス内容が変わることがあります。
精神障害者保健福祉手帳の取得条件について
統合失調症やうつ病、そううつ病(双極性障害)などの気分障害、てんかん、薬物やアルコールの依存症、高次脳機能障害といった精神疾患を持っており、日常生活や就労において制約が出ている人が対象です。さらに、こうした障害による初診日から6か月以上経過していることが条件となります。
障害年金との関係
精神障害で障害年金を受給している場合は、年金証書と同じ等級の障害者手帳を取得できます。
つまり、新たに診断書を取得する必要がなくなります。
逆に「精神障害者保健福祉手帳を持っていれば、障害年金を受給できるのでは?」と思われるかもしれませんが、残念ながら、障害年金受給には障害年金の審査が必要です。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士