もくじ
障害年金の申請時期は、原則的に初診日より1年6か月が経過した頃
障害年金を申請するには、いくつかの条件を満たしておく必要があります。
まず、大切になるのが初診日です。
初診日は精神の障害であれば、メンタルの不調により初めて病院を受診した日のことを指します。
このメンタルの不調での受診は、精神科に限りません。食欲不振で胃腸科、めまいで耳鼻科、だるさで内科などにかかった場合も精神障害の初診日となることがあります。
そして、初診日から1年6か月を経ても症状が緩和せず、障害の状態が続いていると判断される状態、つまり障害等級に該当している必要があります。
この初診から1年6か月を経過した日を「障害認定日」といいます。
障害認定日から時を経ても障害年金は申請できる
障害年金は、障害認定日に請求を行うことが、基本となっています。
認定日請求を行う場合、障害認定日から原則的に約3か月以内の状態を医師に記載してもらい、その診断書を提出する必要があります。
しかし、その時期に障害年金を申請しなかった方もいることでしょう。
認定日当時に障害の状態にあっても障害年金のことを知らなかったという場合もありますし、症状が緩和していたので、病院に通院するのを中断していたケースも存在します。
障害認定日に申請ができなくても、条件を満たせば障害認定日から時を経た後に、障害年金の申請をすることができます。
このうち、過去に遡って請求を行うことを遡及請求と呼びます。
遡及請求を行うにあたっての条件とは
遡及請求とは、過去に遡って、障害年金の受給を請求することを言います。
障害年金申請時期のタイミングを逃してしまった方には、大変助かる制度ではありますが、遡及請求を行うには、以下のような条件に該当していなければなりません。
障害認定日における診断書の等級が一定以上
後述する事後重症で障害年金を申請する場合は、障害認定日の障害等級は関係ありませんが、障害基礎年金の遡及請求の場合は2級~1級に該当する必要があります。障害厚生年金であれば3級~1級に該当することが必須です。
残念ながら、障害認定日に通院がなく診断書が取得できない、あるいは障害の状態が基準より軽かった場合は、遡及請求はほぼ通りません。
障害認定日の期間を過ぎて、認定基準に該当するほど悪化したような場合は、事後重症請求を行います。
現在の病状における診断書の等級も一定以上であること
基礎障害年金で遡及請求をするには、障害認定日の診断書の障害等級が2級以上であることに加え、現在の病状の診断書も2級以上でなければなりません。つまり、過去と現在の2つの診断書のどちらもが、障害等級に該当していることが条件です。
厚生年金の場合は3級以上
ただし、現在の病状が軽くなっている場合は、障害認定日の診断書の障害等級のみ認定され、現在の病状の診断書は2級不該当(厚生年金の場合は3級不該当)となり、現在の障害状態は不支給、過去の年金のみ一時金で受け取ることができます。
なお、診断書が2つだと言うことは、初診日の証明をする受診状況等証明書、障害認定日当時の診断書、現在の診断書それぞれを作成する最大で3名の医師に協力をお願いすることになります。
障害認定日から障害等級が一定以上を維持していること
上記に加えて、もうひとつの重要な条件があります。
それは、障害認定日の時点から一定期間、継続して障害等級が2級以上(厚生年金の場合は3級以上)の状態であったと認められることです。
図のように障害認定日の直後に就労を開始して数年間継続していると、障害認定日の障害状態は一過性の症状増悪と判断される可能性があります。
遡及請求すれば、最大5年遡って年金が受給できる
遡及請求の条件に該当している場合は、遡及請求をし、それが認められることで過去まで遡って年金を受給することができます。
例えば、障害基礎年金2級で単身の場合であれば、5年を遡ると約400万円の受給額となります。
当社で扱った中では、1000万円以上の障害厚生年金の遡及請求が通ったケースも存在します。
しかし、遡及請求には遡れる年数の時効があります。
それが5年です。そのため、8年分の遡及をしたいと思ったとしても、5年を超過していますので、最大5年分までの金額しか受給できないことになります。
遡及請求はできる限り早く行った方が有利になる
遡及請求の条件に該当しており、障害認定日に遡っても5年の時効までには十分な時間がある方でも、できる限り早く遡及請求の準備を行うことをおすすめします。
なぜなら、遡及請求は複雑で、労力がいるものだからです。
なぜ、早く遡及請求をした方がよいのかを、さらに詳しく以下にご説明します。
障害認定日当時の情報が残っていない可能性があるから
遡及請求をする際は、障害認定日当時の状態を示す診断書と、現在の病状を記載した診断書の2つを提出しなければなりません。
現在の診断書は通院先に書いてもらうので手に入れやすいですが、障害認定日当時の状態が分かる診断書を得るには、難しいケースもあります。
障害認定日から現在まで長年の月日が経過していたり、何回も転医を繰り返していたりする場合は、カルテの保存期間経過、閉院に伴う破棄などにより、当時の情報が残っていないということもめずらしくはないからです。
障害認定日当時の状態を証明するには、時が経てば経つほど不透明になっていきますので、その点に注意しましょう。
遅れた分、年金受給額が減ってしまう
遡及請求をし、残念ながら障害認定日の診断書は不支給、現在の病状の診断書のみ認められた場合(事後重症認定)、実際に支給が開始されるのは、請求日の翌月からとなります。
ですので、経済的な不安を抱えているのであれば、遡及請求できると分かった時点ですぐに請求の準備を開始することをおすすめします。時効の関係もありますので、少しでも早く請求すれば、その分受給額も減りません。
「数か月遅れるぐらいならたいしたことはない」と思いがちですが、数か月請求が遅れると、ある程度の受給額の差が出てきます。
ご自身での請求が難しく時間がかかるのであれば、この数か月を遅らせるよりも社労士に頼んだほうが受給額が増える、あるいは変わらないこともあります。
また、遡及請求をするには障害認定日当時の病院への問い合わせや、必要書類を揃えたりなどと大変なことも多いものです。
そのため、1人で抱え込むのではなく、主治医や医療専門スタッフ、社会保険労務士などに相談し、力を借りながら進めていくことをおすすめします。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士