もくじ
障害年金の3つの請求方法について
障害年金には、主に3つの方法があります。
自分がどの請求方法に当てはまるかは、障害認定日の証明や当時の状態などによって、その種類が異なります。以下に、3つの請求方法について、具体的に解説します。
なお、当サイトでは分かりやすいよう「請求」のことを「申請」という単語に置き換えて使うことが多いですが、このページは請求方法の解説となりますので「請求」を使います。
認定日請求
認定日請求は「本来請求」とも呼ばれる、基本的な請求方法です。
この請求は、初診日から1年6か月を経過した時点で、障害の状態にあるかどうか(障害認定基準に該当する)が審査されます。
この1年6か月を経過した日のことを「障害認定日」と言い、目安としてこの日から3か月以内の症状が記載してある医師の診断書を、一緒に提出する必要があります。
請求を行うと、診断書や病歴・就労状況等申立書などの書類が審査されたうえで支給・不支給か、支給となった場合は1~3級のどの障害等級かが決定されます。
そして、実際に年金が支給されるのは、障害認定日を含む月の翌月からです。
障害基礎年金(国民年金のみ)の場合は、1~2級まで
遡及請求
一方、障害認定日当時に障害年金のことを知らなかった、手続きできるような状態になかったなどの理由で、障害認定日に障害年金の申請をできなかったケースもあるでしょう。
しかし、障害認定日から時を経ていても、過去最大5年まで遡っての請求も可能です。これを、遡及請求と言います。
さがみ社会保険労務士法人の場合、最大で900万円を超えたケースもあります。
遡及請求をする場合は、障害認定日当時の状態が記載してある診断書に加え、現在の病状を示す診断書の提出も必要となります。
事後重症請求
事後重症請求とは、障害認定日には障害の状態にあると認められなかったけれども、その後に病状が重症化したことによって、障害認定基準に該当するようになった場合に可能となる請求です。
また、カルテの破棄や医療機関の閉鎖で障害認定日の診断書が取得できない場合も、事後重症を行うことがあります。
事後重症請求をする場合は、申請時より前3か月以内の医師の診断書が必要となりますので、忘れずに添付しましょう。
事後重症請求は遡れない
事後重症請求は、請求日から未来に向けての年金支給という特徴があります。
間違われやすいのですが、過去の重症化した当時まで遡って年金を請求することはできないので、注意してください。
なお、事後重症請求が認められれば、請求日の翌月から年金が支給される扱いになります。
なお、65歳以上(老齢基礎年金を繰り上げ請求している場合は、その日以降)になっている場合は、老齢年金が優先されます。
そのため、基本的に新しく障害年金の申請はできませんので、覚えておいてください。
はじめて2級の請求
はじめて2級の請求とは、障害等級が3級以下の障害を持っていた方が、最初の障害とは別の傷病を併発し、後発の傷病の状態と併せて2級に該当する場合に行うことができます。
初診日が厚生年金の加入時でない場合、障害基礎年金には1~2級しかありませんので、障害の状態が3級相当だと障害年金を受給することができません。
しかし、3級相当の障害に加えさらに別の障害を負ったとき、状態によっては併せて2級となることがあります。
精神の障害で3級の場合下の表の7号に該当します。
表の2号~6号に該当する障害が新しく生じた場合、あるいは2号~6号に該当する障害に3級相当の精神の障害が加わった場合、2級と判定される可能性があるということになります。
例としては、3級相当のうつ病の症状を抱えていた方が、さらに交通事故で親指を欠損し、3級相当の障害を負ってしまった。あるいは、交通事故で親指を欠損し3級相当であったけれど、3級相当のうつ病も併発してしまった。というようなケースが考えられます。
はじめて2級の請求は、複雑な障害年金のなかでもさらに複雑であるため、まずはほかの手段での請求を考えたほうがいいでしょう。
詳しくは、はじめて2級の請求についての記事でご紹介する予定です。
なお、はじめて2級の請求をするには、後発の障害は65歳に到達する前日までであることが条件です。
申請自体は65歳を過ぎていても問題はありません。
年金の遡及をすることはできず、受給が認められた場合は、請求日の翌月分から年金支給がなされます。
障害年金請求は早めに行う方が効果的
障害年金の請求が何らかの理由で遅れることはあると思いますが、障害年金が請求できることが分ったら、なるべく早く請求を行いましょう。遅くなれば遅くなるほど、障害認定日当時の状態の診断書を手に入れることが難しくなりますし、請求の手段によっては年金額が少なくなってしまうこともあります。
特に、事後重症請求とはじめて2級の請求は、1ヶ月請求が遅れると支給額も1ヶ月分減ることになりますので、経済的な面からも早く請求しておいた方が安心です。
どの請求でも医師の診断書は重要な書類となる
障害年金は請求の種類が異なっても、医師が記載した診断書が審査上の重要なポイントになることに変わりはありません。
そのため、自分の状態や状況を適切に医師が把握し、理解してくれることが大切です。障害年金を受給するためには、医師との信頼関係や協力が必要不可欠になります。
障害年金を請求する際には、医師に以下のような関わり方をすることを意識しましょう。
自分の現在の状態を分かりやすく伝えること
障害年金の診断書を医師に記載してもらう際には、自分の現在の状態や状況を分かりやすく伝える必要があります。自分が障害の影響でできないことが多い場合でも、それを恥ずかしがったりためらったりせずに、正直に伝えることが大切です。
もし、本当のことを伝えていないままであれば、医師が病状や生活のしづらさを理解できずに、事実とは異なる診断書を作成してしまうケースがあります。そうなると、障害年金の等級が低くなったり、不支給になる可能性もあるため、自分の症状は明確に伝えましょう。
精神障害を抱える方の多くは、その場で病状を話すのは難しい状態にあるでしょうし、医師側にじっくりと聞いている時間的余裕がないのも現状です。
ですので、医師に話す前に、障害年金受給において重視される症状について、まとめたうえでメモしておくことをおすすめします。
自分だけで説明するのが不安な場合は、家族などに付き添ってもらい、第三者の視点から話してもらうのも有効です。
医師にご自身の状態をしっかりと把握しておいてもらうことは、障害年金の受給の目的だけでなく、より適切な治療に役立つと考えています。
障害認定日当時の診断書が必要な場合は、自分以外の人の力を借りることも大切
遡及請求やはじめて2級の請求など、障害認定日当時の診断書が必要な場合は、時が経っていたためにカルテが破棄されていたり、転医を繰り返していたので当時の病状の把握が難しいということも大いにあり得ます。そのような状況に遭遇すると、自分だけの力では、診断書などの必要書類が集められないという問題点が出てくることも少なくありません。
もし、自分だけの手に負えないと感じたら、遠慮なく主治医や医療スタッフ、社会保険労務士などの専門家に相談してみましょう。場合によっては、障害認定日当時の病院の情報収集のために動いてくれたり、提出書類手続き代行などのサポートもしてくれますので、心身ともにストレスが緩和できることでしょう。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士