もくじ
うつ病で申請する場合のコツ
うつ病で多い「就労での不支給」
うつ病には状態に波があり、人によっては、一時的に再就労を試みたことなどもあるかもしれません。
また、休職期間が終了してしまい、解雇を避けるために軽快していないのに無理に復職するというケースも多くあります。
障害年金の審査では、認定日後の一時的な就労であっても、「就労している時期があるので、就労に問題はなく、障害状態には該当しない」と不支給となるケースが散見されます。
もし、その就労について職場からの配慮を受けていたり、ほとんど出勤できなかった、就労にあたっての困難が発生していたなど「普通に就労している」と言えないような場合は必ず記載してください。診断書にも書いてもらえるとより認められやすくなるでしょう。
ただ、そこまでしても不支給となり、当社の不服申立てによってやっと覆ったという事例はいくつもあります。障害年金申請にあたって就労は、かなり不利になると言わざるを得ません。
さらに、不服申立ては認められる確率が15%にも届きません。
認定日後であっても就労した時期がある場合は、申請を行う前の時点で社労士へ相談することをおすすめします。
日常生活の困難をしっかりと医師に伝える
うつ病を抱える方の中には、記憶力の低下や、コミュニケーション能力の低下に悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。
障害年金受給のためには、診断書にしっかりと日常生活の困難が反映されている必要があります。
もし、診察の際に医師との会話が難しい場合は、事前にメモをしておくと、思い出しながら話すよりは会話しやすくなります。うまく話せなければ、医師にそのメモを渡して読んでもらうこともできます。
ご自身で日常生活について、何を書けばいいのか分からないときは、専門家にご相談ください。精神障害専門の社労士であれば、今までの多くの方から日常生活状況を伺ってきた経験から「こんなことはないですか?」と具体的な例を挙げたヒアリングができるでしょう。
当社の場合は、ご自身の体調やスケジュールに合わせて回答可能なように、途中保存可能なアンケートをご用意しています。もちろん、ご本人のご希望によりお電話やメール等でのヒアリングにも対応しています。
その後、必要に応じてお電話などで追加のヒアリングを行い、ご本人の生活状況が分かる資料を作成。診断書依頼の際に、医師にお渡ししていただいています。
こうすることで、医師の負担を軽減でき、症状も伝えやすくなります。
初診日の書き方
うつ病だけでなく、精神疾患全体にも言えることですが、転院を複数回する方も多く、さまざまな理由で初診日の特定が難しくなることがあります。
例えば以下のような理由が考えられます。
- 治療期間が長くて初診日が思い出せない
- 転院回数が多く、初診病院が不明
- 初診日の病院が閉院するなどして、証明書類を書いてもらう手段がない
このような場合、次にかかった病院のカルテなどから、だいたいの初診日が分かる場合は「◯年◯月頃」といった表記も認められています。
ただし、これは期間が少しずれていたとしても、納付要件や、受給する年金の種類が変わらないことが前提です。
また、初診日の病院に初診を証明してもらうことができないときは、基本的に受診状況等証明書が添付できない申立書を一緒に提出します。
初診日が完全に不明なままでは障害年金の受給はできませんので、調査を重ねるしかありません。
いずれにしても、初診日があいまいだと、障害年金受給の可能性は下がってしまいます。
「◯年◯月頃」と書く必要ことは認められていますが、その必要があるならば、一度、社労士への相談をおすすめします。
一時的な気持ちよりも、継続的な症状を中心に書く
病歴を書くにあたって重要となってくるのは、就労や日常生活に、障害がどの程度困難をもたらしているのかという点です。
そのため「◯◯と言われて辛かった」という一時的な感情のように見える表現だと、読む側は評価しづらくなってしまいます。
例えば、「以降不眠が続いた」とか、「今まではなんとも思わなかったのに、ひどく落ち込んだ」など、うつ病の症状が伺える表現にできないか、考えてみてください。
申請者は医師ではありませんので、原因の断定や、それが実際にうつ病の症状かどうかの判断を行う必要はありません。心当たりのある事実を書いていきましょう。
以下に、厚生労働省のサイトから引用したうつ病の症状の例をご紹介します。
うつ病の症状の例
1) 自分で感じる症状
憂うつ、気分が重い、気分が沈む、悲しい、不安である、イライラする、元気がない、集中力がない、好きなこともやりたくない、細かいことが気になる、悪いことをしたように感じて自分を責める、物事を悪い方へ考える、死にたくなる、眠れない2) 周囲から見てわかる症状
表情が暗い、涙もろい、反応が遅い、落ち着かない、飲酒量が増える
3) 体に出る症状
食欲がない、体がだるい、疲れやすい、性欲がない、頭痛、肩こり、動悸、胃の不快感、便秘がち、めまい、口が渇く
厚生労働省 みんなのメンタルヘルス
うつ病の病歴・就労状況等申立書のサンプル(簡易版)
このサンプルは読みやすくした簡易版です。
実際はご本人やご家族からのヒアリングに基づき、更に詳しく記載します。
- 医療機関:なし
期間:平成◯年4月~平成◯年◯月◯日 -
平成◯年4月、◯◯株式会社に新卒として入社。
職場の環境が悪く、次第に気分の落ち込み、不眠が酷くなり、息苦さなどが生じ、専門の病院を受診することにした。 - ポイント
ご自身または医師の認識している発病の頃から書き始めます。 - 医療機関:◇◇メンタルクリニック
期間:平成◯年◯月◯日~平成◯年◯月◯日 - 平成◯年◯月◯日、◇◇メンタルクリニックを受診。うつ病と診断され、投薬治療を開始。休職を勧められたが、制度がなかったため退職。
食欲不振から食事も摂れず、体重は入社前から10kgほど減少した。
しばらくは、一人暮らしの自宅で、友人に様子を見てもらったりして療養に努めたが、症状は改善せず、実家に帰ることになった。 - ポイント
誰かのサポートを受けていた場合は必ず記入してください - 医療機関:◇◇病院
期間:平成◯年◯月◯日~平成◯年◯月◯日 - 平成◯年◯月◯日、転居に伴い、◇◇病院に転院。そこでもやはりうつ病との診断だった。
- ポイント
転院したときはその理由を書きます。 - 日常生活は自分では何もできないため、親を頼っていた。
親に面倒を見てもらっている罪悪感からか、希死念慮も出現するようになった。
平成◯年◯月◯日、大量服薬により救急搬送。入院となった。【入院期間】平成◯年◯月◯日~平成◯年◯月◯日
- ポイント
入院したときはその期間を書きます。 - 医療機関:◇◇病院
期間:平成◯年◯月◯日~平成◯年◯月◯日 - ポイント
上の項と同一の◇◇病院ですが、期間は3~5年ごとに区切りますので、同じ病院へ長く通っていた場合は、分ける必要があります。 - 起き上がる気力も湧いてこないため、通院時以外は1日の大半をベッドの上で過ごしている。
日常生活はほとんどを家族に任せている状態。 - 以上
退院してからは、ほぼ寝たきりの状態だった。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士