もくじ
障害年金で必要な初診日の記録とは?
障害年金の申請には初診日(障害の原因となった病気やケガについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日)を証明する書類が必要です。
20歳になる前の障害であるか、国民年金と厚生年金のどちらであったか、保険料の未納はなかったかなどで、障害年金の受給の可否や年金額が決まります。
受給の要件を満たしているかどうかは初診日で判断されるため、障害年金を受け取るためには初診日を明らかにすることが必要になります。
初診の医療機関にカルテがなどの診療記録があれば、それらを元に初診の医療機関で「受診状況等証明書」を書いてもらい提出します。
初診日は障害年金において非常に重要なものですので、なにか不安があるときは社会保険労務士にご相談されることをおすすめします。
初診日の記録がない・見つからない場合は?
初めて医療機関にかかってから長期間経っていると、初診日の記録がない、見つからないというケースがあります。
病院が閉院してなくなっていたり、保存期間を過ぎていてカルテが廃棄されていたり、転院を繰り返すうちに初めて行った病院がわからなくなっていたりするケースです。
そうなると、初診の医療機関で「受診状況等証明書」を書いてもらうことができません。
しかし、そのような場合でも、ほかの書類などによって初診日の証明ができれば、障害年金を受け取れる可能性があります。
この形式で初診日を証明するときは、「受診状況等証明書が添付できない申立書」とともに、初診日を証明あるいは推定できる書類を提出します。
初診日を証明する書類の具体例
初診日を証明する書類として認められているものについて、「受診状況等証明書が添付できない申立書」の項目に沿ってご説明します。
身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳
障害者手帳(身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳)を20歳前に交付されていれば、20歳前傷病による年金としての取り扱いを受けることができます。
また障害者手帳の交付より前に初診日があるという証明につなげることができる場合があります。
身体障害者手帳等の申請時の診断書
障害者手帳の診断書には基本的に初診日が記載されていますので、その際の診断書の写しがあればそれだけで初診日の証明が可能です。
診断書の写しを入手するには、診断書等を提出した市区町村の障害福祉の窓口にお問い合わせてください。
ただし、役所での保管には期限がありますので、できる限り早めに問い合わせることをおすすめします。
生命保険・損害保険・労災保険の給付申請時の診断書
生命保険のなかには死亡時だけでなく、重度障害が残った場合にも契約内容にもとづいて保険金が支給されるものがあります。
精神疾患を発症して日常生活を送ることが著しく難しくなった場合も重度障害が残ったと認められます。
このような事故や災害にあって損害を受けた場合、加入していた損害保険から保険金の支給を受け取っている可能性があります。
また仕事中や通勤途中のケガや病気で労働災害と認められたものは、労災保険での補償を受けることができます。
これらの生命保険や損害保険、労災保険の保険金の給付を受ける際、申請に使用した診断書で初診日の証明ができます。
事業所等の健康診断の記録
平成27年10月以前であれば、事業所などの健康診断で異常と診断された日を初診日と見なしていました。
しかし、平成27年10月以降は基本的に健康診断の日は初診日として取り扱わず、「初めて治療目的で医療機関を受診した日」を初診日とするという変更がされました。
つまり、健康診断での異常の診断を受けたあと、その治療のため医療機関で診療を受けた日が初診日となります。
健康診断での異常がすぐに医療機関での診療が必要だった場合に限り、特例として健康診断で異常と診断された日を初診日と見なすことがありますが、精神疾患ではこの特例の適用は難しいでしょう。
母子健康手帳(母子手帳)
母子健康手帳には出生前から出産時、その後の成長の様子や検診結果が記録されています。
この記録の中に先天性の障害の記載があれば、20歳前の障害としての取り扱いを受けることができます。
精神疾患であれば、知的障害が適用の対象です。
健康保険の給付記録(レセプトも含む)
健康保険の給付記録には会社の健康保険組合や国民健康保険など、加入の健康保険を使って受けた診察・治療について日付や受診科目、診療や治療内容、検査項目が記録されています。健康保険組合に依頼して取り寄せ、初診日の証明として提出します。
レセプトとは、診療報酬明細書、調剤報酬明細書および訪問看護療養費明細書のことで、医療機関が作成する診療行為にかかった費用の明細を指します。
レセプトからはどのような診療や投薬を受けたのかが分かりますので、初診日の証明資料のひとつとなります。
保険組合によって多少期間は異なりますが、保管期間が過ぎれば情報は削除されてしまいます。障害年金の受給を考えるのであれば、なるべく早めに取り寄せを行いましょう。
お薬手帳・糖尿病手帳・領収書・診察券(可能な限り診療日や診療科分かるもの)
医療機関の領収書、診察券からは発行した医療機関や日付を知ることができます。
お薬手帳からは服用している薬の種類や量が確認でき、糖尿病手帳では血糖値などの検査数値が分かります。
精神疾患の場合、お薬手帳に抗うつ薬など処方記録が残っていれば、初診日を証明するためのひとつの資料となりえます。
領収書や診察券からも受診した診療科や初診日が判明する場合があります。
小学校・中学校等の健康診断の記録や成績通知表
小学校や中学校での健康状態や成長の様子が分かります。
この時点ですでに異常があったと考えられるような記録があれば、障害が20歳前であったことを証明できます。
精神疾患でいえば、先天性障害である知的障害に適用されることがあります。
盲学校・ろう学校の在学証明・卒業証書
盲学校の在学証明・卒業証書であれば視覚に障害があったこと、ろう学校の在学証明・卒業証書であれば聴覚に障害があったことが示せます。
いずれも20歳後に入学した場合を除き、障害が20歳前であったことを証明できます。
第三者証明
上記のような書類がない場合でも、第三者による証明を得ることで初診日の証明とすることができます。
近所の人や友人、民生委員などに証言してもらい、初診日を推定するものです。
第三者証明で初診日を証明するためには、3親等以内ではない、2人以上の証明が必要です。
初診医療機関で診療に携わった医師や看護師、薬剤師、理学療法士、精神保健福祉士などの医療従事者(医療事務を除く)からの証言であれば、1人でも認められます。
ただ、当社では信用性の高さから、非医療従事者1人だけの証言で認められた事例もありますので、諦めずにご相談ください。
第三者証明については、通院を証明する書類がないときの最終手段、第三者証明でさらに詳しく解説しています。
その他
診察・治療の過程を要約した医療情報サマリー、電子カルテの記録、紹介状などが、その他として添付することができる書類です。
当社では詳細はないものの、初診日が分かるレセコンの画面を印刷したもので認められたケースが多いです。
初診日の判断につながるような内容が書かれていれば広く認められ、ケースによっては家族の日記もその他の添付書類になります。
交通事故などが原因の場合は、新聞記事なども含まれます。
レセプトコンピューターの略。医療機関が診療報酬明細書を作成するための機械やソフトウェアのこと
添付できる参考資料は何もない
初診日の証明資料が何もないときのために項目として用意されていますが、初診日を証明せずに障害年金を受給できることはありません。
年金事務所で相談したときに、「何もない」と答えてしまうと、この欄にチェックを入れるよう教えられるかもしれません。
チェック欄がある以上、その指示が誤っているわけではありませんが、その状態で提出してしまうと必ず不支給(却下)になってしまいます。
ご自身で証明資料を見つけられない場合は、社労士に相談することをおすすめします。
初診日を証明する書類のポイント
初診の医療機関で記録がない・見つからない場合でも、そのほかに初診日を証明する書類があれば障害年金の申請に使うことができます。
客観的に初診日が判断できるかという点が、初診日を証明する書類として認められるかどうかのポイントになります。
そのあたりを意識して探しましょう。
また、資料を複数提出することで、その信頼性を高めることができます。
初診日を証明する記録の提出方法
初診日を証明する書類は「受診状況等証明書を添付できない申立書」に添付して提出します。
「受診状況等証明書を添付できない申立書」の作成方法
「受診状況等証明書を添付できない申立書」の用紙は障害年金の申請の相談に行くと渡される必要書類の中に入っています。A4の大きさの1枚の用紙で、初診の医療機関について傷病名・医療機関名・医療機関の所在地・受診期間・添付できない理由・同時に提出する参考資料を記入します。自筆が難しい人は代筆者が書くことも認められています。
なくしてしまって見つからない場合や書き直したいときには、日本年金機構のWEBサイトからダウンロードすることも可能です。
受診状況等証明書を添付できない申立書
「受診状況等証明書を添付できない申立書」が必要ない場合とは?
「受診状況等証明書を添付できない申立書」は「受診状況等証明書」で初診日の証明ができないときに、資料とともに提出することで初診日を認めてもらい、障害年金を受けられるようにする書類です。
したがって初診日が「受診状況等証明書」で証明できる場合は、提出をする必要はありません。
また、診断書を書いてもらう医療機関と初診の医療機関が同一であるときは、「受診状況等証明書」そのものが不要ですので、「受診状況等証明書を添付できない申立書」も必要ありません。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士