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障害年金とは

公開日:2020/08/18
  最終更新日:2023/12/08

器質性精神障害(症状性を含む)の認定基準と留意点

認定基準-器質性精神障害

器質性精神障害とは

聞き慣れない言葉ですが、器質性疾患の対義語を機能性疾患と言います。
この機能性疾患が、「臓器に明らかな異常がないにも関わらず、なんらかの自覚症状がある状態」であると説明されると、なんとなくイメージがつくのではないでしょうか。

器質性疾患は、臓器(脳や血管なども含む)に炎症や萎縮、外傷などの異常があり、その結果として現れる症状のことです。
かんたんに言い換えると、器質性精神障害は、「原因である病気や傷害がはっきりと分かる精神障害」ということになります。

認定基準

この認定基準は2018年5月17日時点で厚生労働省・日本年金機構が発表しているものです。
ICD-10に準拠する該当する傷病名については、本ページの後半にあります。

  1. (1)症状性を含む器質性精神障害(高次脳機能障害を含む。)とは、先天異常、頭部外傷、変性疾患、新生物、中枢神経等の器質障害を原因として生じる精神障害に、膠原病や内分泌疾患を含む全身疾患による中枢神経障害等を原因として生じる症状性の精神障害を含むものである。
    なお、アルコール、薬物等の精神作用物質の使用による精神及び行動の障害(以下「精神作用物質使用による精神障害」という。)についてもこの項に含める。
    また、症状性を含む器質性精神障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。
  2. (2)各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
    障害の程度 障害の状態
    1級 認知障害、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、日常生活が著しい制限を受けるもの
    2級 認知障害、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、日常生活が著しい制限を受けるもの
    3級 (厚生年金のみ)①認知障害、人格変化は著しくないが、その他の精神神経症状があり、労働が制限を受けるもの
    ②認知障害のため、労働が著しい制限を受けるもの
    障害手当金 認知障害のため、労働が制限を受けるもの
  3. (3)脳の器質障害については、精神障害と神経障害を区分して考えることは、その多岐にわたる臨床症状から不能であり、原則としてそれらの諸症状を総合して、全体像から総合的に判断して認定する。
  4. (4)精神作用物質使用による精神障害
    アルコール、薬物等の精神作用物質の使用により生じる精神障害について認定するものであって、精神病性障害を示さない急性中毒及び明らかな身体依存の見られないものは、認定の対象とならない。
    精神作用物質使用による精神障害は、その原因に留意し、発病時からの療養及び症状の経過を十分考慮する。
  5. (5)高次脳機能障害とは、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、日常生活又は社会生活に制約があるものが認定の対象となる。その障害の主な症状としては、失語、失行、失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがある。
    なお、障害の状態は、代償機能やリハビリテーションにより好転も見られることから療養及び症状の経過を十分考慮する。
    また、失語の障害については、本章「第6節 音声又は言語機能の障害」の認定要領により認定する。
  6. (6)日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。また、現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。

出典:厚生労働省・日本年金機構「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」

アルコール、薬物等の使用には給付制限がある

(4)を見ると、精神症状が出てさえいればアルコールや薬物等の依存症についても、障害年金の対象となるように読めます。
しかし、にあるように、その原因を確認する必要があり、アルコールや薬物を自ら使用した場合には、障害年金の対象外となります。

これは、それぞれ国年法70条および厚年法73条の2に以下のように定められています。

故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、障害若しくはその原因となつた事故を生じさせ、又は障害の程度を増進させた者の当該障害については、これを支給事由とする給付は、その全部又は一部を行わないことができる。自己の故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、死亡又はその原因となつた事故を生じさせた者の死亡についても、同様とする。

国民年金法 第70条

保険者又は被保険者であつた者が、自己の故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、障害若しくは死亡若しくはこれらの原因となつた事故を生ぜしめ、若しくはその障害の程度を増進させ、又はその回復を妨げたときは、保険給付の全部又は一部を行なわないことができる。

厚生年金保険法 第73条の2

逆に、アルコールや薬物の摂取が故意でなかった場合は、障害年金の対象となります。
職場でシンナーを使用していた結果、薬物依存症となってしまったケース、本人の知らない間に薬物を摂取させられていたケース、うつ病や認知症などのためアルコール量が制限できなくなっていたケースなどが考えられます。

当社でもアルコール依存症に関するご相談はよくお受けすることがありますが、残念ながら、健康であった状態からご自身の意思によって始めた習慣による依存症については、障害年金の対象外となるため請求の代行は承っておりません。
故意ではないケース、あるいは精神疾患が事前にあった場合は、アルコール依存症があっても受給できる可能性がありますので、ご相談ください。

アルコール依存症で受給できるケース

前述にもあるとおり、うつ病などの影響でアルコール依存症になってしまったという場合は、アルコール依存症の診断名があっても障害年金の対象となります。
ただ、これは初診日の時点で、うつ病や発達障害などの疾患が疑われ、その時点でアルコール依存症でないことが条件です。
例えば、先に抑うつ状態などの精神症状があっても、病院にかかっておらず初診日より前の時点でアルコールの摂取を始めた場合は、請求事由を自ら発生させたとして、認定の可能性は極めて低くなります。

認定対象の傷病(うつ病・双極性障害など)ではなく、もっと軽度なもの(軽症うつ病エピソードや一過性のうつ状態など)と診断されていた場合でも、病名を問わずメンタルに起因する疾患による初診日の後にアルコール多飲があった場合は、その後、アルコールの摂取を続けたことでアルコール依存症となっても、そのアルコールの摂取が病気の悪化によるものであると判断できれば、障害年金の対象となります。

注意すべき点は、発症とアルコールへの依存の順番ではなく、診断とアルコールへの依存の順番が判断の基準となるところです。
メンタルの不調を感じていても、医療機関に行かず、先にアルコールを頼ってしまったというケースでは、受給が難しくなります。
アルコール依存パターンA
アルコール依存パターンB

初診日が変わることがある

(1)にある通り、新生物(ガン)による精神障害も、器質性精神症状に含まれます。
ただ、がんによる脳の変質と、がんの告知によるショックの両方が混在しているとき、現在の状態の主原因がどちらなのかで初診日が変わってくることがあります。

例えば、脳に腫瘍が見つかり、告知でショックを受け、その後うつ傾向が見られたとします。
その場合、以下のどちらを主として考えるかで、初診日が変わってきます。

  1. ①腫瘍による脳機能の障害がうつ症状を起こしていると考えられる場合……器質性の精神症状として、ガンに関連する初診日が初診日となります。
  2. ②告知によるショックがうつ症状を起こしていると考えられる場合……ガンに関連する初診日でなく、抑うつを主訴として受診した日が初診日となります。

実際に、告知によるショックが主の場合は多く、告知後に「緩和ケア」として精神科医の診察を受けることがあります。
初診日をいつと捉えるかで、受給額が変わってくることもありますので、ご自身がどちらに当てはまるか分からないというような場合は、社労士への相談をおすすめします。

器質性精神障害に該当する診断名

IDC-10において「F0 症状性を含む器質性精神障害」については、下記のように区分されています。
NOSはnot otherwise specifiedの略で、「詳細不明」または「性質不明」であることを示します。

F00 アルツハイマー病の認知症

F00.0
アルツハイマー病の認知症 早発性
アルツハイマー病2型、初老期認知症アルツハイマー型、アルツハイマー型原発変性認知症初老期発症
F00.1
アルツハイマー病の認知症 晩発性
アルツハイマー病1型、アルツハイマー型原発変性認知症老年期発症、老年認知症アルツハイマー型
F00.2
アルツハイマー病の認知症 非定型又は混合型
非定型認知症アルツハイマー型
F0.09
アルツハイマー病の認知症 詳細不明

F01 血管性認知症(動脈硬化性認知症を含む)

F01.0
急性発症の血管性認知症
F01.1
多発梗塞性認知症
主として皮質認知症
F01.2
皮質下血管性認知症
皮質下血管性認知症高血圧の既往があり、大脳半球深部の白質に虚血性壊死巣がある症例を含む。
F01.3
皮質及び皮質下混合性血管性認知症
F01.8
その他の血管性認知症
F01.9
血管性認知症、詳細不明

F02 他に分類されるその他の疾患の認知症

F02.0
ピック病の認知症
F02.1
クロイツフェルト・ヤコブ病の認知症
F02.2
ハンチントン病の認知症
ハンチントン舞踏病の認知症
F02.3
パーキンソン病の認知症
振戦麻痺の認知症、パーキンソン症候群の認知症
F02.4
ヒト免疫不全ウイルス病の認知症
F02.8
他に分類されるその他の明示された疾患の認知症
認知症(下記における)

  • 脳リピドーシス
  • てんかん
  • 肝レンズ核変性症
  • 高カルシウム血症
  • 甲状腺機能低下症,後天性
  • 中毒
  • 多発性硬化症
  • 神経梅毒
  • ナイアシン欠乏症
  • 結節性多発(性)動脈炎
  • 全身性エリテマトーデス<紅斑性狼瘡><SLE>
  • トリパノソーマ症
  • 尿毒症
  • ビタミンB12欠乏症

F03 詳細不明の認知症

F03
【包含】
《初老期》
・認知症 NOS
・精神病 NOS

原発性変性認知症 NOS

《老年期》
・認知症:
 ・NOS
 ・抑うつ型又は妄想型
 ・精神病 NOS

【除外】
せん妄又は急性錯乱状態を伴う老年認知症(F05.1

F04 器質性健忘症候群, アルコールその他の精神作用物質によらないもの

F04
【包含】非アルコール性コルサコフ精神病又は症候群
【除外】
《健忘》
・NOS
・前向性
・解離性(F44.0)
・逆向性

コルサコフ症候群:
・アルコールによる又は詳細不明(F10.6)
・その他の精神作用物質による(共通4桁項目.6 を伴うF11-F19)

F05 せん妄, アルコールその他の精神作用物質によらないもの

F05
【包含】
《急性又は亜急性》
・脳症候群
・錯乱状態(非アルコール性)
・感染症性精神病
・器質性反応
・器質精神症候群
【除外】
アルコールによる又は詳細不明の振戦せん妄(F10.4)
F05.0
せん妄、認知症に重ならないもの
F05.1

せん妄, 認知症に重なったもの
上記の診断基準を満たす病態で, 認知症(F00F03)の経過中に現れるもの
F05.8
その他のせん妄
混合性病因によるせん妄
術後せん妄
F05.9
せん妄、詳細不明

F06 脳の損傷及び機能不全並びに身体疾患によるその他の精神障害

F06
【除外】
下記に関連するもの:
・せん妄(F05.-)
F00F03 に分類される認知症
アルコールその他の精神作用物質の使用によるもの(F10-F19)
F06.0
器質性幻覚症
器質性幻覚状態(非アルコール性)
【除外】
アルコール性幻覚症(F10.5)
統合失調症(F20.-)
F06.1
器質性緊張病性障害
【除外】
緊張型統合失調症(F20.2
《昏迷》
・NOS(R40.1)
・解離性(F44.2)
F06.2
器質性妄想性 [統合失調症様] 障害
器質性の妄想状態及び幻覚妄想状態
てんかんにおける統合失調症様精神病
【除外】
急性一過性精神病性障害(F23.-)
持続性妄想性障害(F22.-
薬物による精神病性障害(共通4桁項目.5 を伴うF11-F19)
統合失調症(F20.-)
F06.3
器質性気分(感情)障害
【除外】
気分障害、非器質性又は詳細不明(F30F39
F06.4
器質性不安障害
【除外】
不安障害, 非器質性又は詳細不明(F41.-)
【除外】
解離性(転換性)障害、非器質性又は詳細不明(F44.-)
F06.5
器質性解離性障害
器質性情緒不安定性(無力性)障害
【除外】
身体表現性障害、非器質性又は詳細不明(F45.-)
F06.7
軽症認知障害
F06.8
脳の損傷及び機能不全並びに身体疾患によるその他の明示された精神障害
てんかん精神病 NOS
F06.9
脳の損傷及び機能不全並びに身体疾患による詳細不明の精神障害
《器質性》
・脳症候群 NOS
・精神障害 NOS

F07 脳の疾患、損傷及び機能不全による人格及び行動の障害

07.0
器質性人格障害
《器質性》
・偽精神病質性パーソナリティー
・偽遅滞性パーソナリティー
《症候群》
・前頭葉
・辺縁系てんかんパーソナリティー
・ロボトミー
・白質切断術後
【除外】
《持続的人格変化(下記の体験後の)》
・破局体験(F62.0)
・精神科疾患り患(F62.1)
脳振とう<盪>後症候群(F07.2
脳炎後症候群(F07.1
特定の人格障害(F60.-)
F07.1
脳炎後症候群
【除外】
器質性人格障害(F07.0
F07.2
脳振とう後症候群
【除外】現在の脳震盪症

F07.8
脳の疾患, 損傷及び機能不全によるその他の器質性の人格及び行動の障害
右半球器質性情緒障害
F07.9
脳の疾患, 損傷及び機能不全による器質性の人格及び行動の障害, 詳細不明
器質精神症候群

F09 詳細不明の器質性又は症状性精神障害

F09
【包含】
《精神病》
・器質性 NOS
・症状性 NOS
【除外】
精神病 NOS(F29
社会保険労務士 小西 一航
小西 一航
さがみ社会保険労務士法人
 代表社員
社会保険労務士・精神保健福祉士

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