もくじ
障害の程度がどのぐらいであるかが確認される
障害認定の基準は、まず、個人の障害の程度がどのぐらいであるかが把握されます。障害の程度は、1級~3級に分けられ、数字が小さくなるほど症状が重くなります。
また、障害を持ってはいるものの、1級~3級に該当しない程度のものもあることでしょう。その場合は、障害手当金というカテゴリーに割り当てられます。
3級や障害手当金は、障害基礎年金には存在しません。
障害認定基準は国年令別表、厚年令別表第1および厚年令別表第2に規定されています。
全体に共通する障害認定基準をかんたんに説明すると、おおむね以下のようになります。
障害の程度 | 障害の状態 |
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1級 | 障害の影響で寝たきりなどになっており、一人では身の回りのことができない。 常に他人からの援助や支援が必要となる。 活動範囲が病院のベッド周辺のみ、または自宅の寝室のみに限られている。 |
2級 | 障害を持っているために、身の回りのことや社会生活に著しい制限を受け、常にではないものの他人からの援助や支援を必要とする。 活動範囲が病棟内、または自宅のみに限られている。 労働による収入を得ることができない。 |
3級 | 障害を持っていても、ある程度の日常生活や社会生活はできるが、特に就労の面において著しい制限を受ける、または制限を必要とする。 |
障害手当金 | 障害の程度3級に当てはまる程度ではないが、就労において制限を受けることがあったり、就労の制限を受けたりする程度の障害を残すものを言う。 |
原則的に上記のような基準を用いて、1級~3級またはそれ以外の障害の程度に区分されます。
しかし、認定の基準はそれだけではなく、個人の病状や日常生活・社会生活を送るために、その人がどれぐらいの制限を受けるのかなどの状態も含めて、総合的に判断されることも覚えておきましょう。
精神障害の傷病名ごとにも区分される
障害認定の基準は、障害の程度とともに、特定の傷病名に該当していることも必要となります。
精神障害の場合、その傷病名は、A~Eに分けられています。
それぞれの区分について、国民年金・厚生年金保険 障害認定基準において認定要領が例示されていますので、分かりやすい言葉に直してご紹介します。
本ページでは、A統合失調症、気分障害(うつ病・双極性障害など)、神経症、B器質性精神障害について解説します。
Cてんかん、D知的障害、E発達障害については後編でご紹介します。
A 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害
統合失調症は症状が回復しない場合があり、予後の不良が続く可能性も高いといわれています。しかし、数年が経過するうちに、よりよい回復の兆しが見えることもあり、症状を確信的に断定はできません。そのため、症状が発生した時点とその経過、療養生活を含めた流れを重視する必要があるのです。
統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害
統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害においての障害の状態の程度は、以下のように定められています。
障害の程度 | 障害の状態 |
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1級 | 統合失調症による重たい残遺症状や、重たい病状が持続しており、大きな人格の変化や思考に関する障害、幻聴や幻覚の症状が顕著なため、常に他人の援助や介護が必要である状態。 興奮や混迷などの急性期症状と呼ばれる状態に対して、その後の自閉や意欲の減退などの陰性症状を主体とした症状 |
2級 | 統合失調症による残遺症状または病状があり、その影響で、人格の変化や思考障害、妄想・幻聴などの症状があるため、日常生活・社会生活において著しい制限を受ける状態。 |
3級 | 統合失調症における残遺状態や症状がある。人格の変化は大きなものではないが、思考障害や妄想・幻覚などの症状があり、これにより就労において制限を受ける状態。 |
気分(感情)障害
気分(感情)障害は、その症状が顕著に現れているときとそうではない時期を繰り返すと言われています。
その特徴の影響で、現在の症状だけに焦点を当て、認定することは十分ではないとされているのです。そのため、症状の経過に沿って、日常生活や社会生活における状態も考慮されます。
気分(感情)障害おいての障害の状態の程度は、以下のように定められています。
障害の程度 | 障害の状態 |
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1級 | 重度な気分や意欲、行動の障害や思考障害の症状が見られる時期があり、これらの症状が持続しているか、ひんぱんに生じる。 そのため、他人の援助が常に必要である状態。 |
2級 | 気分や意欲、行動の障害とともに思考障害が見られる時期があり、これらの症状が持続したり、ひんぱんに生じたりする。 その影響で、日常生活や社会生活に著しい制限を受ける状態。 |
3級 | 気分や意欲、行動の障害と思考障害が見られる時期はあるものの、それらの症状は著しいものではない。 しかし、症状の持続や繰り返しが見られるため、就労に関する制限を受ける状態。 |
神経症
神経症は重篤化している場合でも、原則的には障害認定の対象には含まれません。しかし、神経症であっても精神病の病状や状態に当てはまるときには、統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害と同様な基準で判断されるケースもあります。
B 症状性を含む器質性精神障害
先天異常や頭部外傷、中枢神経などの器質障害が原因とされる精神障害などが、この区分に含まれ、アルコールや薬物使用による精神障害も対象となります。ただし、急性的な中毒や依存、故意による摂取が原因だと思われる場合は対象外です。また、脳の器質障害は多様な臨床症状があるため、多角的・総合的な判断が必要となります。
さらに、脳損傷による機能障害は、リハビリテーションなどの治療によって症状が回復する例も少なくないことから、症状の経過や療養の流れも吟味しながら十分に考慮することが重要となります。また、これらの精神障害を持っていても、就労ができる場合もあります。その際には、仕事の種類や他の社員との意思疎通の状況、職場でどの程度の援助を受けているかなどの点にも、気を配らなければなりません。
症状性を含む器質性精神障害においての障害の状態の程度は、以下のように定められています。
障害の程度 | 障害の状態 |
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1級 | 重篤な認知障害や人格の変化、精神神経症状がひどいために、他人からの援助や支援が常に必要な状態。 |
2級 | 認知障害や人格の変化、精神神経症状が顕著なため、日常生活・社会生活に著しい制限を受ける状態。 |
3級 | 認知障害や人格の変化は顕著ではないものの、精神神経症状の影響で就労面が制限される、または認知障害があるため、著しい就労の制限を受ける状態。 |
障害手当金 | 認知障害を持つがゆえに、就労面において制限を受ける状態。 |
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士