社会的治癒とは、医学的に治癒(完治)していなくても、症状が寛解し通院や服薬を必要としない状態が一定期間続いていれば、治癒していたものと見なす社会保険上の考え方です。
期間の目安は、精神障害の場合、おおむね5年以上です。
本来は加療が必要であるのに、経済的理由などで、通院や服薬を中断していたというような場合は、社会的治癒には該当しません。
なお社会的治癒が認められるには、通院や服薬をしていなかったというだけでは、不十分で、社会生活が問題なく送れていたことを証明する必要があります。
一定期間以上、厚生年金に加入していれば、被保険者記録紹照会回答票(標準報酬月額の昇降や賞与の履歴)の提出にて多くのケースで認められます。
難しいのは、国民年金加入期間中の証明です。
この社会生活には、就労だけでなく家事や育児など家庭内での活動も含みますが、客観的な資料を用意することが難しく、証明しづらい傾向にあります。
当社で社会的治癒が認められたケースとしては、大型テーマパークへの家族旅行、複数回の海外旅行、登山歴、難易度の高い資格の取得、著書の出版などがありました。
それぞれ、裏付ける写真や合格証明書コピー、著書のレビュー記事などを提出したことで認められました。
社会的治癒の援用により、初診日が変わることで、加入していた年金制度が変わったり、納付要件を満たせる場合があります。
詳しくは、社会的治癒とはどういうもの? 知っておきたい基準についてをご覧ください。
もし医師から、寛解のため通院・服薬の必要がなくなったと言われた場合は、再燃に備えて「軽快のため終診」などと記載してもらった受診状況等証明書を取得しておくと、時間を経て再燃してしまった際に、社会的治癒を主張する手段になる可能性があります。
受診状況等証明書には◯か月以内というような制限はありませんので、念のためで取得しておいてもいいかもしれません。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士