金銭的余裕がなく年金納付が困難な状況のときなどに、納付を先延ばしにすることができる制度のことです。
この制度によって猶予となった期間は、障害年金や老齢年金、遺族年金の受給資格期間にカウントされます。
例えば20歳を過ぎてすぐに納付猶予が認められ、その半年後に交通事故に遭い歩けなくなったとします。
もし、納付猶予や全額免除が認められていた場合、実際には保険料の納付をしていなくても、受給資格期間にカウントされているため、障害年金の納付要件を満たすことができます。
しかし、同様のケースで納付猶予や全額免除の申請をしておらず保険料がすべて未納だった場合、納付要件を満たせず、障害年金を受給することができません。
注意が必要な点として、受給資格期間にはカウントされますが、老齢年金の支給額には反映されません。あくまで「猶予」であり、将来的に納付を前提とされている制度だからです。
老齢年金の減額を防ぐためには、追納を行う必要があります。この追納は10年を過ぎると行うことができませんので、ご注意ください。
ただ、追納ができなかったからといって、未納の扱いとなり、受給資格期間までなくなってしまうということはありません。あくまでも老齢年金の受給額に反映されないだけです。
もし、今後の年金納付も困難だと推測されるのであれば、全額免除も視野に入れたほうがいいでしょう。
全額免除の場合、世帯主の所得も一定以下である必要がありますが、ご自身が世帯主である場合、配偶者が世帯主である場合は、どちらも所得額の基準額の条件は変わりません。
また、全額納付したときより金額は減ってしまいますが、免除の場合は老齢年金の受給額にも反映されます。
納付猶予制度の対象となるのは20歳から50歳未満の方で、ご自身および配偶者がいる場合はご自身と配偶者双方の前年所得または前々年所得が一定額以下の方です。また、学生は対象外となります。学生にはまた別に学生納付特例という制度があります。
平成28年6月までは30歳未満が対象でしたが、平成28年7月以降は50歳未満までに対象が広がりました。
令和6年現在での所得の基準額は
(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
です。
所得額が対象となる金額であっても、自動で納付猶予の適用はされませんので申請を行う必要があります。
お住まいの市区町村役場、年金事務所へ赴いての提出、郵送での提出、電子申請の手続きも可能です。
なお、障害基礎年金を受給している方(障害等級が1~2級の方)は、国民年金の納付が全額免除されます。
法定免除は自動的に適用されますが、申し出が必要です。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士