医療従事者・福祉従事者の方などの「精神科領域で活躍するプロフェッショナル」への取材を行い、そのユニークなアプローチをご紹介するこのコーナー。
引き続きKOKORONEメンタルクリニック院長の龍田 哲行先生にお話をお伺いします。
前回は、開業のきっかけについてお伺いしました。
今回は、開業に向けて、実際どのようなことをされたのかのお話です。
開業に向けて
開業に向けてはどんなふうに進んでいったのでしょうか
そうですね、「じゃあ具体的に開業するぞ」と思っても、まず開業自体なにをすればいいのか、分からない状態でした。開業コンサルと呼ばれる人たちもいるんですけど、その人たちをどう選べばいいのかも分からないわけですよ(笑)
でも結局、いろんな縁があって、とてもいい人たちに恵まれて、このクリニックができました。
前の病院で小西さんにお会いできたのもそうだし、実はこの建物を設計してくれたのは、彼女のお父さんなんですよ。
開業マネージメントは藤沢で開業している先輩からの紹介で決めました。その人がめちゃめちゃいい人で、この人だったらお願いできるなって思ってから、ようやく具体的に始まった感じですね。
ここは自然が多いですが、土地も意識されているんですよね
▼クリニックからの風景。春は桜が見えます。(KOKORONEメンタルクリニックホームページより)
そう、そこがもう、偶然としか言えないんですが、めぐり合わせでここに建てることができたんです。
まず、開業するにあたっては、箱だけあればいいというふうには思っていませんでした。
科学的にも自然に触れ合う時間の多い人の方が、メンタルの状態が良いというのがあったので、クリニックも緑の多い中でやりたかったんです。
かと言って、前の病院みたいな山奥でというのはさすがに、そういう気にはなれなくて。
開業支援の方に提案されるのは、どうしても駅前の雑居ビルとかになってくるんですよね。でも、僕はそういうビルの中では絶対やりたくなかったんです。
アクセスが最重要であれば、それもいいんですけど、自分が患者だったらって考えたときに駅前の雑居ビルの階段やエレベーターで診察に行きたくないなっていう気持ちがあったんですね。
やっぱり精神科は、以前よりはメジャーになってきたとはいえ、やはり通っていることを知られたくない人は多いので、病院っぽくしたくないというのがありました。
なかなか難航されたそうですね
最初は、コンビニの跡地を改良してとか、広めの一軒家をリノベーションしてできないかというふうにも考えていたんですけど、なかなかそういう物件にも巡り会えなくて。
当然、場所が決まらなければスタートできないんですが、最悪ビルの中に緑を多めにしてやってはどうかとも聞かれたんですけど、そういうのは絶対やりたくないって伝えていました。
場所がほんとうに決まらなくて、近くに山があって、近くに海があって、川があってっていう場所を神奈川県内で探すと、鎌倉なんかもあるんですけど、いかんせん土地の値段が手が出ないっていう(笑)
鎌倉はすごそうですね(笑)
どうやって、この場所を見つけられたのでしょう
もともと通勤でそこの国道134号線を通ってたんです。ここは湘南平が見えて、海も近い、花水川もある。休みの日にふと湘南平を一周してみようと思ったんですよ。
ここは当時、全部畑だったんです。山が目の前で、海も近くて、隣に川がある、広さある、こういう場所がいい! ってなったんですけど、土地の値段も分からないし、そもそも売りに出ていなかったんです。
それで、コンサルの方に「こういう場所がいいんですよね」って言ったら、すぐに動いてくれて、土地担当の人がなんと地主さんのところにピンポンしに行ってくれた(笑)
そうしたら、ちょうど相続の関係で手放そうと思って、複数の不動産屋と話をしている最中だったそうなんです。ほかの不動産屋は分譲して、建物を建てようとしてたらしいんですけど、「地域のために使ってくれるんだったら」って僕に売却してくれたんです。
こればっかりは、巡り合わせも大事なんだなって思いました。
場所が決まって一段落、となってあとは割とスムーズに進んだんでしょうか
いえ、それが……、最後まで薬局をまあまあ諦めるような事態になっていました。
クリニックの隣に薬局があるんですけど、最後まで誘致できない可能性があったんです。
いわゆる町のクリニックは、門前薬局と言って、道路を挟んだ前だったりマンションの上下階だったりが近くにあるのが一般的なんです。
やっぱり、僕の感覚でも診察してもらって処方箋もらったら、横とかですぐ薬をもらえたらいいなっていうのがあって。
患者側としても、薬局がすぐ近くにあるというのはすごく大きいです
敷地内にある薬局は、調剤基本料というのが、1/4とか1/2になってしまうんです。だから、誘致のお話をしても、どこも厳しい反応でした。
でも、ここを建て始める直前にお会いしたところが、「建物の図面を見せてほしい」と言ってくれたんです。それで、確認してもらったら、「この設計なら大丈夫かもしれない」ということになって、入ってくれたのが今の薬局なんです。
薬局の立地にもいろいろな決まりがあるんですね
薬局は諦めかけていました。ゆくゆくはITが進んで、処方箋の情報が登録薬局に飛んでっていうふうになるから、それでどうにかと思ってました。
奇跡的に入ってもらえて良かったです。
薬局が誘致できたら、今度は薬局にどんな人が入るんだろうっていうのを、ちょっと気にしていました。不安の強い精神科の患者さんに対して、副作用のことばかりを強調して話してしまう方とかがいるので。でも、そこも良い方が入ってくれて安心しました。
本コーナーは、ユニークなアプローチで精神医療に取り組む医療・福祉従事者といった「精神科領域で活躍するプロフェッショナル」をご紹介し、メンタルの不調を抱えた方の選択肢を広げてもらおうというコンセプトのもと作成されています。
個人の紹介を目的としており、特定の医療機関への受診を促すものではありません。
また、障害年金への理解がある医師だからといって、実際の症状にそぐわない診断書を作成することはありません。
障害年金の受給だけを目的に受診し、事実と異なる診断書の作成を求めるようなことは行わないでください。