今回はシリーズ「障害認定日の診断書作成を断られた際の対処法」の最終回です。
パート1~3は下のリンク先からご覧ください
障害認定日の診断書作成を断られた際の対処法➀ 「カルテに記載されている情報が少ない」
障害認定日の診断書作成を断られた際の対処法② 「当時の医師は退職している」
障害認定日の診断書作成を断られた際の対処法③ 「症状が軽快している時期」
「神経症なので障害年金の対象外」と言われても対応してもらえる可能性はある
遡及請求のため、障害認定日に受診していた医療機関に連絡すると「当時の病名は神経症なので、診断書を書いても通りませんよ」と言われてしまうことがあります。確かに神経症(適応障害、不安障害、パニック障害、強迫性障害など)は原則として障害年金の対象外です。
遡及請求は、障害認定日の診断書によって認定の可否が決まります。障害認定日は初診日から1年6ヵ月後または20歳到達日のどちらか遅い方なので、病歴が長い方にとっては、初期段階の状態で審査されることになります。
また、障害認定日の頃は経過観察中で、はっきりした診断名が付いていない場合があります。この時期に精神障害者保健福祉手帳や自立支援医療制度の利用を申請している場合、仮の診断名として神経症(適応障害、不安障害、パニック障害、強迫性障害など)の病名が付いていることがあります。
このように障害認定日の病名が神経症や診断名が付いていない場合でも、障害年金の対象病名で診断書を作成してもらえる可能性があります。
今回は統合失調症、うつ病、発達障害の例を紹介します。
■統合失調症
統合失調症の典型的な症状は幻覚・妄想ですが、前兆期には、不眠、神経過敏、不安焦燥感などの症状があります。この時点で統合失調症が発症する前触れであることを診断するケースはほとんどありません。
前兆期から数ヵ月から数年が経過して幻覚・妄想などの陽性症状が目立つ急性期に移行します。この時に統合失調症と診断され、不眠症、神経過敏、不安焦燥感が前駆症状(前兆として現れる症状)であったと判断できます。これを後方視的な診断といったりします。
■うつ病
障害認定日の病名は適応障害と診断されていることがあります。アメリカの診断基準(DSM-5)では、適応障害の症状はストレス因子の始まりから3ヵ月以内に出現し、ストレス因子の消失後6ヵ月以内に改善するとされています。
例えば、職場の人間関係がストレス因子の場合、適応障害と診断され休職や退職して半年経過してもなお、気分の落ち込み、意欲の低下などが持続している場合、うつ病など他の診断名が変わることがあります。
また、実際はうつ病と診断していても、職場に提出する診断書には将来的に復職する可能性を考慮してうつ病よりマイルドな印象を受ける適応障害と記載することがあります。
■発達障害
発達障害は先天的な脳の機能発達の偏りによって、コミュニケーションや対人関係など、日常生活に困難が生じやすいとされています。その生きづらさから神経症を含む二次障害を引き起こす場合があります。ところが、発達障害は先天的な障害であるものの、本人も気が付かず、神経症の治療過程で、はじめて発達障害(一次障害)があり、神経症が二次障害であるとわかることがあります。
これらの場合は、障害認定日時点では神経症や病名が付かなかった場合でも、統合失調症、うつ病、発達障害などの病名を併記するなどの対応してもらえる可能性があります。ただし、依頼する順番や準備する書類などに入念な下準備が必要になりますので、あらかじめ障害年金を得意とする社労士事務所等に相談することをお勧めします。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士