社会保険労務士・精神保健福祉士の小西です。
障害年金審査は、厳しくなる時期と緩やかになる時期があります。特に精神の障害は基準があいまいな部分が多く、その傾向は身体の障害に比べて顕著です。
緩やかな時期のエピソードは2022年のブログをご覧ください。
今年の3月頃より、障害厚生年金の審査が難化してきていると感じています。
普段なら2級認定される診断書(等級の目安が2級相当)でも3級(級下げ)となるケースが5件も発生しています。
当社より取り扱い件数の多い2つの社労士事務所にも問い合わせ(M社労士事務所様、W社労士法人様、お忙しい中ご丁寧な対応ありがとうございました)、どちらも同じ印象を持っているとのことでした。現時点で判明している3つの傾向をお知らせします。
- 職員や認定医による誤差ではない
- 障害状態の審査は、日本年金機構が契約する認定医が行います。令和4年4月より、認定に必要な診断書等の障害状態に関する事項について日本年金機構の職員が事前確認票を作成する仕組みが導入されています。
職員による事前確認が補助的なものであれば、円滑な認定事務のため、この運用は機能するのでしょう。ところが、取り寄せた5件の認定調書を見ると、認定医は職員の事前確認に異議はなく5件すべて丸呑みしていました。つまり、職員による事前確認は実質的な一次審査になっています。
なお、事前確認の職員名はすべて異なるので、担当者による誤差でなく、組織における意思決定の可能性が窺われました。 - スルーされていた「独居」も級下げ理由に
- これまでの「一人暮らし」は不利になる要素でしたが、「一人暮らし+パート就労」や「一人暮らし+処方薬なし」など複合的な理由のひとつになるくらいで、単一で3級に級下げの理由にはなりませんでした。今回は、「一人暮らし」が単独で3級に級下げの理由にされています。
- 「休職中」に注目している可能性
- 明確に「休職中」を級下げの理由としている記述はありませんでしたが、他に不利になる要素がないにも関わらず3級と判定された案件がありました。他の事務所でも同じような事例があったので、「休職中=一時的な悪化」として取り扱い始めた可能性があります。
「休職中」に関して確認が取れましたので続報です
この傾向は周期的に訪れる審査のブレなのかも知れません。しかし、ほとんどの請求者にとっては一生に一度の裁定請求です。制度として規範性のある審査であってほしいと切に願っています。
今後、不服申立の件数は増加して行くでしょう。当社としては既に決定した案件は粛々と審査請求の準備を進め、進行中の案件については対策を検討してから請求に臨みます。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士