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「あとから遡及請求」が有効な場面は限られる
公開日:2024/04/15
  最終更新日:2024/04/15

「あとから遡及請求」が有効な場面は限られる

「あとから遡及」とは

社会保険労務士精神保健福祉士の小西です。

あとから遡及」とは、「障害認定日の診断書をなかなか取得できない」「現在の診断書の期限が迫っている」などの理由で、とりあえず事後重症請求を進め、受給決定した後に遡及請求をやり直すことを指します。
便宜上の表現であり、正式な呼称ではありません。

「あとから遡及」に必要な請求書類

「あとから遡及」は、既に事後重症請求で受給権が発生しているので、新たに提出する請求書類は以下のとおりです。

年金請求書
診断書
事後重症請求で提出したものではなく、障害認定日のものを新たに用意します。
病歴・就労状況等申立書
前回提出した病歴・就労状況等申立書に前回請求日以降の状況を追記します。
「障害(厚生・基礎)の取下げについて」
決まった書式はありません。フリーフォーマットで「障害認定日での障害(厚生・基礎)年金が受給できる場合は、現在受給している障害(厚生・基礎)の取り下げを申出します。」と年月日、住所、氏名、基礎年金番号を記載します。
「事後重症請求から認定日請求への変更に関する理由書」
後述します。

基本的に「あとから遡及」はお勧めしない

遡及請求の可能性があれば、当社の場合あらゆる手段を尽くし、最終的に遡及請求または事後重症請求を選択するので「あとから遡及」は行いません。
ご相談者にも、将来的な遡及請求を想定して、一旦事後重症請求を行うことをお勧めしていません。
なぜなら「あとから遡及」は多くのデメリットがあるからです。

「あとから遡及」のデメリットとは

「事後重症請求から認定日請求への変更に関する理由書」の提出が必要

先に行った事後重症請求の際に提出した年金請求書「障害給付の請求事由」の項目は「事後重症による請求」を選択しています。さらに理由として「2.初診日から1年6月目の症状は軽かったが、その後悪化して症状が重くなった。」を選択していると思います。
年金請求書「障害給付の請求事由」の項目は「事後重症による請求」を選択しています。さらに理由として「2.初診日から1年6月目の症状は軽かったが、その後悪化して症状が重くなった。」を選択

前回は「初診日から1年6月目の症状は軽かった」と申し立てたにも関わらず、「あとから遡及」では「初診日から1年6月目の症状は重かった(ので障害等級に該当する)」と請求するわけですから矛盾が生じます。
そのため、請求方法変更に至った経緯や理由を「事後重症請求から認定日請求への変更に関する理由書」にて示す必要があります。

認定のハードルは高くなる

「あとから遡及」では、前回の書類もチェックされますが、特に前回の病歴・就労状況等申立書の内容には注意が必要です。例えば、障害認定日付近のエピソードの中で、「安定していた」「問題なかった」などポジティブな文言があると、それを根拠に不利な判定となる可能性があります。
また、一度確定した受給権を取り消して、新たな受給権を発生させることは、遡及分の年金一時金、法廷免除による国民年金保険料の還付金などの計算など審査側に事務作業が新たに発生します。
これらの事務手続きが煩雑になることによる審査側の心理的なハードルはある程度存在するのではないかと個人的に思います。

最大5年分の年金一時金は受け取れない

障害認定日が5年以上前の場合、遡及請求が認められると時効が生じていない約5年分の年金一時金を受け取ることができます。

障害年金は遡及請求で最大5年分を遡って受給できます

「あとから遡及」の場合、時効の起算点は前回請求日ではなく、新たな請求日になります。そうすると、5年分の年金一時金から前回請求日以降に受給している年金は既払いとして控除されるので、最大5年分の年金一時金は受け取れません。
「あとから遡及」の一時金の図解
「あとから遡及」の一時金の誤った図解

「あとから遡及」が有効な場面もある

「前回請求の初診日よりも前に初診日があることが発覚した」「認定日のカルテは廃棄されたと聞いていたが、奇跡的に後から見つかった」などのケースでは「あとから遡及」を行う合理的な理由になります。
このようなケース、かつ前回請求から5年の経過前であれば、「あとから遡及」は有効なのでチャレンジしても良いと思います。

代表 社会保険労務士 小西
小西 一航
さがみ社会保険労務士法人
 代表社員
社会保険労務士・精神保健福祉士

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