統合失調症やうつ病などの気分障害で障害厚生年金を請求する際、診断書内容が2級相当でも、パート・フルタイムを問わず就労状況を差し引かれて3級になってしまうのはよくある事です。
他方、発達障害は特殊で、フルタイム(障害者就労)でも差し引かれずに、そのまま障害厚生年金2級に決定することは珍しくありません。
次の表は当社で申請代行して障害厚生年金2級に決定した方の就労状況です。
Aさん | Bさん | Cさん | |
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障害名 | 発達障害・気分障害 | 広汎性発達障害・ADHD | 広汎性発達障害・ADHD |
勤務先 | 派遣会社 | 一般企業 | 病院 |
雇用体系 | 障害者雇用 | 障害者雇用 | 障害者雇用 |
勤続年数 | 1年9ヵ月 | 1年8ヵ月 | 3ヵ月 |
勤務日数 | 週5日 | 週5日 | 週5日 |
手取り月給 | 約20万円 | 約18万円 | 約14万円 |
仕事の内容 | 事務職 | 事務補助 | 清掃等 |
合理配慮及び意思疎通の状況 | ➀業務量の調整
②適時の面談 |
➀マルチタスクが苦手な為、業務量の調整
②支援者との定期面談 |
➀自分のペースで作業が可能。休憩も取りやすい
②困った時はすぐに上司が対処してくれる ③同僚とコミュニケーションが困難で、ストレスになることが多い |
なぜ、発達障害は就労状況が差し引かれ難いのか、そのヒントは発達障害の認定要領にあります。
障害名 | 障害の程度(2級) |
統合失調症、気分障害(うつ病など) | (前略)日常生活が著しい制限を受けるもの |
発達障害 | (前略)日常生活の適応にあたって援助が必要なもの |
統合失調症や気分障害の認定要領には、「日常生活が著しい制限を受けるもの」とあります。就労は「身支度をして職場へ行き、決まった時間内に職務を遂行する」ことをイメージします。これができるのであれば、たとえ診断書が2級相当であっても「日常生活が著しい制限を受けるもの」と矛盾してしまい、差引かれる傾向にあります。
一方で発達障害の認定要領には、「日常生活の適応にあたって援助が必要なもの」とあります。合理的配慮の提供義務のある障害者就労であれば、認定要領「適応にあたって援助が必要なもの」と矛盾しません。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士