就労しながらの障害年金 重要な「合理的配慮」
就労中の方が障害年金を請求する際、事業者による合理的配慮提供の度合いがポイントになります。
合理的配慮とは
合理的配慮とは、障害のある方が障害のない方と平等に人権を享受し行使できるよう、一人ひとりの特徴や場面に応じて発生する障害・困難さを取り除くための、個別の調整や変更のことです。
事業者は改正障害者雇用促進法(平成28年4月施行)により、障害者に対する差別の禁止及び合理的配慮の提供が義務付けられています。
さて、概念として理解しても、就労の場面で提供される具体的な合理的配慮とはどのようなものでしょうか。
合理的配慮の実例
当社は、就労中の知的障害・発達障害の方の障害年金請求を代理する際、就労先事業者へ合理的配慮などについてヒアリングを行っています。
厚生労働省が公表している指針事例集から、当社がヒアリングで頻繁に耳にする事例をピックアップします。
担当のあり方
- 本人の混乱を避けるため、指示や相談対応を行う者を限定している(他部署の業務指示であっても必ず担当者を通すようにしている)。
- 業務指導を行う者(本人の上司等)と相談対応を行う者(総務部等)を分けている。
指導・相談の仕方
- 定期的(朝礼・終礼時等)に面談や声かけを実施したり、連絡ノートを活用し、日々の報告・連絡・相談を受けている。
- マンツーマンにより、手本、見本を見せ、本人の理解度を確認しながら業務指示をしている。
- 一つの指示を出し、終わったことを確認してから次の指示を出すなど、作業指示を一つずつ行うようにしている。
- 当初は業務量を少なくし、本人の習熟度等を確認しながら徐々に増やしていく。
- 作業手順や使用する器具、就業場所等について、図や写真等を活用して細かく説明した業務マニュアルを作成する。
- 業務指示を明確にする。
例)「午前中はこの仕事を行ってください」、「終わらなくても、午後はこの仕事をしてください」と時間を区切って指示する
「Aが終了したら、次はBです」と業務の完結をもって区切る
「きれいになったら次のものを洗う」ではなく、「10回洗ったら次のものを洗う」等、客観的に作業方法を指示する
勤怠や休憩
- 通勤ラッシュを避けるために始業時間を遅くしている。
- 規定の休み時間以外にも休憩を認めている。
- 体調、通院日等を考慮し、柔軟に休憩・休暇を認めている。
今回のものはあくまで一例で、知的障害・発達障害の方が働く場面では、他にも様々な合理的配慮が提供されていることでしょう。
障害年金請求に際しては、審査側に合理的配慮の程度がしっかり伝わるよう、具体的事例を診断書、病歴・就労状況等申立書などに反映させることを心がけましょう。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士