昨日、第53回(令和3年度)社会保険労務士試験が行われました。
5時間近い長丁場な上、コロナ渦という環境の中、受験生の方はさぞご苦労されたかと思います。
手応えの得た方もそうでなかった方も、困難な状況での挑戦、その勇気に心より敬意を表します。まずは、心身共に休めて頂ければと思います。
さて、資格試験は、自分に合った効率的な学習方法を見つけることと、学習時間の確保は、車の両輪のようにどちらかが欠けても合格に辿り着くことはできません。
今回は、当社にも受験生がいることもあり、社労士試験合格に必要な学習時間がテーマです。下記は、当社の試験合格者4名の学習時間をまとめたものです。
資格学校のパンフレット等には、社労士試験合格に要す学習時間は800~1,000時間と書かれています。私が通った資格学校でも、「仕事をしながらでも、1日2.5時間以上勉強すれば1年で合格が可能」と説明されたことを覚えています。
ところが、現実には800時間程度で合格する方は僅かです。労働社会保険諸法令から幅広く出題され、細かい数字などの暗記力が求められるのが特徴です。そのため、ほとんどの方(私を含め)は2倍以上の時間を要します。
だからといって単に年数を重ねれば合格に近づくというもではありません。ドイツの心理学者、ヘルマン・エビングハウスが導き出した理論「エビングハウスの忘却曲線」では、人は何かを覚えても、
- ・20分後には42%忘れる
- ・1時間後には56%忘れる
- ・9時間後には64%忘れる
- ・1日後には67%忘れる
- ・2日後には72%忘れる
- ・6日後には75%忘れる
- ・31日後には79%忘れる
と述べています。
したがって、「脳は短期間で忘れるようにできている」を前提に、覚えたことを早期に練習問題で解くなど、インプットとアウトプットを何度も繰り返し、記憶を強化・定着させる必要があります。
表にある試験合格者の最終年(合格年)では、学習時間に1日平均4~5.5時間を費やしています。睡眠と仕事で1日の3分の2を占めているとすれば、残り8時間でまとまった時間を取れるのはせいぜい2~3時間程度でしょう。あとは、通勤中、食事中、入浴中など、「ながら勉強」で時間を稼ぐことになります。私の場合は、通勤電車で往復2時間以上あったのと、昼休みを使えたので、家での学習は1時間程度で済みました。とはいえ、試験直前期からは風呂やトイレにも参考書を持ち込みんでいました。
仕事や育児などで「時間がない」と思っている方でも、スキマ時間を集めれば、意外と時間は作れるものです。社労士試験は、暗記力を問う試験で、地頭力や論理的思考力はほとんど関係ありません。ひたすらテキストの読み込みと過去問を解く、この繰り返しです。
この他に必要なのは、メンタルの部分です。孤独に感じたり、点数が伸びない時は、挑戦する意味を見出せなくなることがあります。そんな時は初心を思い出し、「絶対に今年(来年)合格するぞ」という強い気持ちを持ち続けることができるかどうかが、最終的に合否を分ける気がします。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士