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初診日に関する不服申立て
公開日:2021/03/12
  最終更新日:2022/06/13

不服申し立てで請求側の主張が認められました。(7)

代表社員の小西です。

今週月曜日、厚生労働省年金局事業管理課から、「保険者(政府)が初診日不明のため却下とした決定を変更し、障害基礎年金2級の支給と認める」旨の(保険者による処分変更)連絡がありました。

厚生年金の処分変更は公開審理の1週間程度前までに連絡がありますが、基礎年金は前日連絡が2回続きました。

本件は、気分変調症の初診日が平成12年〇月〇日(以下、平成12年)と確認できるか否かを争いました。
審査請求書に添付した理由書を一部加工して転載します。

  1. 請求人は気分変調症(以下、「当該傷病」という)により障害の状態にあるとして、障害基礎年金を請求したが、当該傷病の初診日が平成12年であることを確認できないことを理由に却下とされた。
  2. 初診医療機関(A市立病院)のカルテは既に廃棄されており、代わりにレセコンの画面写しを取得した。これにより、請求人は平成12年〇月〇日に内科を、平成18年〇月〇日に心身医療科を受診していることを確認した。
    レセプト(診療報酬明細書)を作成するコンピューターシステムのこと
  3. 2軒目の医療機関(B内科クリニック)にて受診状況等証明書を取得した際、カルテに前医(A市立病院)についての記述は確認できなかった。
  4. 3軒目の医療機関(Cクリニック)を訪問し、カルテを確認したところ、前医に関する情報は2軒目の医療機関(B内科クリニック)のみであった。
  5. 4軒目の医療機関(D医院)へカルテ内の病歴を確認したところ、A市立病院の記述(平成11年頃うつ病発症した。以降、A市立病院を受診。)が見つかり、受診状況等証明書を取得した。なお、同時にカルテ写しの提供を求めたが、医療機関の理解を得ることができなかったことを申し添える。
  6. D医院の受診状況等証明書の記載内容(A市立病院を平成11年以降に受診)がA市立病院レセコン画面写しと時期が近接していることから、当該傷病の初診日は平成12年であることを再確認した。

病院の記録

  1. 次に、請求人の被保険者全記録を照会した。

    未加入:昭和57年12月(〇〇才)~昭和59年3月(〇〇才)
    第一号被保険者:昭和59年4月(〇〇才)~昭和61年3月(〇〇才)
    第三号被保険者:昭和61年4月(〇〇才)~現在

    上記を踏まえ、年金保険料納付要件を確認する。

    (1)保険料納付要件を満たさない初診年月
     未加入の全期間及び第一号被保険者のうち昭和60年6月よりも前の期間
    (2)保険料納付要件を満たす初診年月
     第一号被保険者のうち昭和60年6月以降の期間及び第三号被保険者の全期間

  2. 平成27年10月1日より施行された「障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて」(以下、「初診日の新取扱い」という)を摘記する。

    ① 初診日が具体的に特定できなくても、参考資料により一定の期間内に初診日があると確認された場合であって、下記③又は➃に該当するときは、一定の条件の下、請求者が申し立てた初診日を認めることができることとする。

    ② 初診日があると確認された一定の期間が全て国民年金の加入期間のみであるなど同一の公的年金制度の加入期間となっており、かつ、当該期間中のいずれの時点においても、障害年金を支給するための保険料納付要件を満たしている場合は、当該期間中で請求者が申し立てた初診日を認めることができることとする。

    ③ また、当該資料が、請求の5年以上前ではないが相当程度前である場合については、請求者申立ての初診日について参考となる他の資料とあわせて初診日を認めることとする。

    ④ ①から④の各項目に限らず、初診日の確認に当たっては、初診日の医証がない場合であっても、2番目以降の受診医療機関の医証などの提出された様々な資料や、傷病の性質に関する医学的判断等を総合的に勘案して、請求者申立てによる初診日が正しいと合理的に推定できる場合は、請求者申立ての初診日を認めることができることとする。

  3. 上記7の被保険者記録と8の「初診日の新取扱い」を踏まえると、(1)保険料納付要件を満たさない初診年月である「未加入の全期間及び第一号被保険者のうち昭和60年6月よりも前の期間」に初診日があると合理的に推定できなければ、請求者申立てによる初診日を認める(年金保険料納付要件を満たす)と解することが相当である。
  4. 請求代理人が取得した資料には、平成12年よりも前に当該傷病と相当因果関係がある傷病による受診を窺わせる記録は一切確認できなかった。
  5. 上記の事実から、当該傷病の初診日は平成12年であると判断するのが相当であり、請求日において2級の障害基礎年金の支給を求める。

以上

理由書5のD医院の受診状況等証明書の記載内容(A市立病院を平成11年以降に受診)が決定的証拠でした。しかし、D医院のカルテが作成された日(初診日)は、請求の1年前であったため、「初診日の新取扱い」の原則(5年以上前)から外れており、③「請求の5年以上前ではないが相当程度前である場合については、請求者申立ての初診日について参考となる他の資料とあわせて初診日を認めることとする。」の適用を主張しました。

結果として、保険者(政府)は請求者側の主張を認め、当該傷病は平成12年とし、障害基礎年金の支給を決定しました。

この決着により、ご契約から既に1年7か月も経過してしまいましたが、ご依頼者様に朗報をお届けすることができて安堵しました。

代表 社会保険労務士 小西
小西 一航
さがみ社会保険労務士法人
 代表社員
社会保険労務士・精神保健福祉士

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