最近の審査状況
6月以降の審査傾向
社会保険労務士・精神保健福祉士の小西です。
最近の審査傾向の変化について6月以降、このブログで取り上げてきました。
初診日の取り扱いに変化?
障害年金の審査は大きく「障害等級」と「初診日」の2つがあります。過去4回の記事の共通は「障害等級」の審査が以前よりも厳しくなった、というものでした。
今回は、もうひとつの審査「初診日」の取扱いに変化がみられたので取り上げます。
障害年金制度において、精神障害の初診日とは、病名を問わずはじめて精神科(心療内科)を受診した日となることが多いです。
かつては、内科などの他の診療科でも相当因果関係を主張すれば初診日と認定されることがありましたが、現在では連続性(紹介状の有無)や他科での治療内容などの裏付けがなければ認められ難くなっています。
ところが、最近の返戻では、Aさん、Bさんともに、はじめて精神科を受診した精神科ではなく、請求病名(双極性障害、うつ病)が診断された2軒目の医療機関の初診日に変更するよう指示がありました。
これまで精神障害の初診日は、てんかんが併存するなど特殊な例を除き、途中で病名が変わっても同一傷病(診断名の変更)として初診日は変わりませんでした。
このように初診日の範囲をさらに狭め、請求病名の診断日とする日本年金機構の取扱いは、ぱっと見分かりやすいですが、大きな問題点が2つあります。
納付要件を満たせなくなる場合がある
障害年金は初診日の前々月以前に一定期間年金保険料が納付(免除等含む)されていなければ請求することができません。取扱い変更により初診日が後ろ倒しになると、発症後の稼得能力と判断力が低下した期間も含まれるので、納付要件を満たせなくなる場合があります。
また、初めて精神科を受診した日が厚生年金であっても、その後に診断名が変更になった時点で国民年金だと、障害厚生年金は請求できなくなってしまいます。
初診日の特定が難しくなる
神経症と精神病ははっきりとした境界でなく、グラデーションのように濃淡になっていることや複数併発していることがあります。このため、医師によって診断名が異なる場合も珍しくありません。
また、発達障害に本人も周囲も気づかず、二次障害の神経症が先に表面化して精神科を受診することがあります。こういったケースでは、治療の経過で心理検査を受検して発達障害と診断されます。
そうすると、私たちのような障害年金の実務家や年金事務所職員でさえ初診日特定に迷うでしょうから、ご自身で請求する当事者や支援者の方々は混乱するだろうことは想像に難くありません。
現時点では2件のみなので、組織(日本年金機構)としての取扱い変更なのかははっきりしません。もし、組織としての取扱い変更であるなら、社会保障審議会(年金部会)で検討されている「(厚生年金)初診日要件の緩和」と関係しているのかもしれません。
今後も同様の返戻が続くようであれば続報にてお知らせします。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士