障害年金の遡及請求時に額改定請求をする理由とは
遡及請求は障害認定日(初診1年6か月)と現在の2つの障害等級を審査するため、2枚の診断書を提出します。
その際、障害認定日よりも現在の障害の程度が重くなっている場合(障害認定日3級→現在2級)は、同時に額改定請求書を提出します。理由は、診断書内容が「障害認定日3級相当」「現在2級相当」の診断書を提出したにも関わらず、「障害認定日3級」「現在3級」と決定なったとき、現在が3級になったことに対しての不服申立てを行えるようにです。
もし、額改定請求書を提出していなければ、「現在3級」の決定に不服申立てはできません。
なぜなら不服申立ては保険者の処分(決定)に対して行うものだからです。
遡及請求により年金を受ける権利(受給権)と障害等級は障害認定日に決定します。形式上は、現在の障害等級について何も処分していないことになります。
そうすると、現在は2級相当であっても、理屈として、処分が行われていない現在の障害等級(3級)に対して不服申立てはできません。
しかし、額改定請求書を提出しておけば、保険者は「現在3級」と決定した場合、現在の障害等級について、何らか処分(等級を変更しない決定)をする必要があるので、その処分(3級)に対して不服申立てが可能となります。
この「遡及請求時の額改定請求」という方法は、万が一「現在3級」となったときに不服申立ての道を残すための苦肉の策で、社労士等の情報発信によって少しずつ知られるようになったもので、年金事務所では案内されません。
しかし、デメリットもあるので提出する際は慎重な判断が必要です。
遡及請求時の額改定請求のデメリット
唯一のデメリットは、再度の額改定請求が1年間できなくなることです。
例えば、遡及請求時に障害認定日、現在ともに障害者雇用で就労している場合、2級相当の診断書であっても3級となる可能性が高いです。この状況で額改定請求を同時請求した後、審査結果を待っている間に休職や退職したとします。
休職中や退職後に額改定請求すれば2級の可能性があったにも関わらず、すでに額改定請求を同時請求してしまっているので、1年を待たなくてはなりません。
遡及請求時に額改定請求書を提出すべきケース
以下のケースであれば、現在の障害等級が3級となった場合に備えて、不服申立てを視野に額改定請求書の提出をお勧めします。
- 「障害認定日(診断書)3級相当」「現在(診断書)2級相当+不就労」
- 「障害認定日(診断書)2級+就労中」「現在(診断書)2級+不就労」
迷ったらご相談ください
このように遡及請求時の額改定請求は、メリット・デメリットがあり、ノウハウが必要となります。どうすべきか迷ったときは、障害年金を得意とする社労士に相談することをお勧めします。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士