代表社員の小西です。
タイトルにもある「遡及請求」とは、過去に遡って、障害年金の受給権を発生させる請求方法です。
今回は、その診断書の依頼をするときのポイントとして、「診断書依頼の順番」についてご紹介します。
「遡及請求」についての基本的な情報は、関連記事:障害年金は遡及請求で最大5年分を遡って受給できますをご参照ください。
遡及請求では、現在の診断書の他に、障害認定日(初診1年6か月後)の障害状態を示す診断書の合計2通を提出することになります。
現在と障害認定日の医療機関が同一であれば問題ないのですが、障害認定日はAクリニック(以下A)、現在はBクリニック(以下B)など依頼する医療機関が異なる場合、順番は非常に重要です。
ご自身で遡及請求手続きを行う場合、年金事務所では診断書を受け取り、同時期にA、Bのそれぞれに診断書を依頼する方が大半だと思います。
しかし、当社が手続きを代行する際は、特別な事情がない限り、先に現在の通院先であるBへ診断書作成を依頼するようにしています。
なぜなら、下準備をせずにAに診断書作成を依頼してしまうと、障害認定日時点の診療録(カルテ)の情報が乏しいことを理由に断られてしまうことがあるからです。
障害年金の診断書は、自立支援医療や精神保健福祉手帳の診断書とは異なり、記載項目が非常に多くなっています。それを過去のカルテのみで作成することは多忙な医師にとって負担のかかる作業となります。
しかも、精神障害の診断書で審査上最も重視される項目は、日常生活能力の判定・程度です。カルテ内にこの項目を記載できるだけの判断材料が乏しければ、Aが作成を拒みたくなるのも無理はありません。
短い診察時間では仕方ないことなのかもしれませんが、カルテの内容が睡眠・食欲についてと処方薬情報のみという医療機関も存在します。
ですが、もし、障害認定日の日常生活状況がわかる参考資料(障害認定日における日常生活の情報を盛り込んだ病歴・就労状況等申立書コピーとBの診断書コピーなど)があれば、Aの反応は異なるかもしれません。
実際に、最初はAに断られても、カルテ情報を補完する参考資料を渡すことにより、結果的に現実に即した内容の診断書を作成していただいた例は少なくありません。
欠点としては、同時に依頼する場合に比べて障害年金申請が1か月遅れることくらいです。
しかし、遡及請求が認められれば、将来に向かっての年金に加えて数百万円の年金一時金を受給できる可能性があります。
遡及認定の見込みがあるのであれば、多少時間がかかったとしても、入念に準備して遡及認定の可能性を最大化させるべきだと思います。
ただし、Bの診断書は請求日前3か月以内の現症日でなければなりません。それを過ぎてしまうと無効になってしまいますので、Aの診断書に時間がかかるようなら、請求前にBの診断書現症日の変更が必要です。
処方薬などの変更が無ければ、改めて新たな診断書の作成依頼をせずとも現症日と作成日だけの変更(2重線+訂正印)で対処可能です。その程度の訂正は、基本的に別途費用はかからないでしょう。
このように、遡及請求は、診断書依頼の順番を考慮して、慎重に申請準備を行うことをお勧めします。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士