もくじ
生活福祉資金貸付制度とは?
生活福祉資金貸付制度は、社会福祉協議会によって行われているもので、低所得者や障害者、高齢者へ経済的支援をし、在宅福祉や社会参加を促すことを目的としています。
また、借りる目的に応じて資金を貸し付けることで、経済的な援助を行います。
利用に制限のない障害年金と違い、生活福祉資金貸付制度では貸し付けられた資金を何に使うかが非常に重要となってきます。
※「新型コロナウィルス感染症に関連した緊急小口資金等の特例貸付」「令和6年能登半島地震に関連する緊急小口資金特例貸付」については、貸付金額や条件などが異なり、本ページでは扱っていません。
生活福祉資金の4つの種類
生活福祉資金には、大きく分けて4つの種類があり、それぞれ貸付条件が異なるため、借りる際にはどの種類に当たるのかを決めることになります。
以下に、4つの生活福祉資金の種類と特徴を簡単にまとめました。
- 1.総合支援資金
- 総合支援資金は、生活していく上で必要な資金を貸し付けるもので、生活支援費や住宅入居費、一時生活再建費の3つの種類に分けられています。
いずれも生活に必要な費用を一時的に賄うためのものです。
こちらは、障害年金を含む公的給付を受け取っている方は利用することができません。 - 2.福祉資金
- 福祉資金は、福祉に関わる支出を援助する「福祉費」と、緊急かつ一時的に資金が不足した場合に借りることのできる、「緊急小口資金」の2つから成り立っています。
福祉費として申告できるものは、技能習得に必要な経費や福祉用具の購入費用、介護サービスを受けるための費用などが該当します。 - 3.教育支援資金
- 高等学校や大学に通うために必要な資金を貸すもので、教育支援費と就学支度費の2種類があります。
- 4.不動産担保型生活資金
- 低所得、または要保護の高齢者に対し、不動産を担保として資金を貸し付けるものです。
不動産担保型生活資金と要保護世帯向け不動産担保型生活資金の2つから成ります。
生活福祉資金貸付制度の対象者
生活福祉資金貸付制度の対象となるのは、次の3つの世帯です。
障害年金とは異なり、個人ではなく世帯単位となる点に注意してください。
- 1.低所得者世帯
- 家族や親せきなど、他から資金を借りるあてがない世帯。
- 2.障害者世帯
- 身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた人が属する世帯。
- 3.高齢者世帯
- 65歳以上の高齢者が属する世帯。
また、この制度は「貸付」であるため、残念ながら返済の見込みがない場合は利用できません。
生活福祉資金貸付制度の利用期間
生活福祉資金貸付制度を利用できる期間は、資金の種類によって異なります。総合支援資金のひとつである生活支援費は、生活再建までの間に必要な生活費用を貸し付けるもので、貸付期間は12か月以内と決められています。
また、不動産担保型生活資金の貸付期間は、仮受け人の死亡時まで、もしくは貸付元利金が貸付限度額に達するまでです。
その他の一時的に必要な資金は一度の貸付になるので、上記のような利用期間は定められていません。
民間の貸付にはない生活福祉資金貸付のメリット
民間の機関でもお金を借りることはできますが、生活福祉資金貸付制度には、民間での貸付にはない以下の2つのメリットがあります。
利子が低い
お金を借りるときに気になるのが、利子の存在です。当然、利子が高いほど返済額は大きくなります。
しかし、生活福祉資金貸付制度は、非常に利子が低いのが魅力です。貸し付ける際には連帯保証人を立てれば、無利子で借りられます。一方、連帯保証人を立てない場合は、原則1.5%の利子がつきます。
相談支援を受けることができる
生活福祉資金貸付制度は、経済的な支援を行うだけではありません。地域の民生委員などが、制度を利用した世帯への相談支援を行います。なぜなら、生活福祉資金貸付制度を利用する方はお金の面だけではなく、他の面でも困難を抱えていることがあるからです。そこで、相談支援も行うことで、総合的な課題の解決を図ります。
生活福祉資金貸付制度の返済条件は?
生活福祉資金貸付制度は、給付ではなく貸付なので、借りた額は返還する必要があります。
そのため、借りる前に返済条件を知っておくことは非常に大切です。
生活福祉資金貸付制度の返済条件には、据置期間と償還期間の2つがあります。
据置期間とは、元金の返済はなく、利子分だけを返済する期間です。そのため、返済する額は少なくなります。
一方で、償還期間は実際に借りた資金を返す期間のことです。
据置期間と償還期間は、資金の種類によって異なります。
例えば、生活支援費は据置期間が最終貸付日から6か月以内、償還期間は据置期間経過後10年以内で、緊急小口資金の据置期間は貸付日から2か月以内、償還期間は据置期間経過後12か月以内です。
ちなみに、償還期限を過ぎても返済が済んでいない場合は、延滞元金につき年に5%の利子が発生するので、注意が必要です。
生活福祉資金貸付制度と障害年金は同時利用できる?
精神障害者をはじめとする障害者は、障害年金を受け取ることができますが、もし必要な資金が手元にない場合は、生活福祉資金貸付制度も利用できるのでしょうか。
結論としては、生活福祉資金貸付制度のうち「総合支援資金」については、障害年金を受給している方は、障害年金の受給金額が少額であっても受け取ることができません。
それ以外の項目については、地域により異なることがありますので、お住まいの地域の福祉協議会に問い合わせてください。
まとめ
生活福祉資金貸付制度は、障害者や低所得者、高齢者へ経済的支援を行う制度です。
資金の種類は細かく分かれており、それぞれ貸付条件や貸付額、返済条件が異なります。民間の貸付を行う機関に比べると利子が低いのがメリットですが、もちろん返済は必要なので、返済条件をよく確認した上で申請をするのがおすすめです。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士