障害年金事務所の繁忙期は月末
社会保険労務士・精神保健福祉士の小西です。
今回は社労士事務所の繁忙期について取り上げます。
企業の顧問となり、社会保険手続きをメインとする一般的な社労士事務所の繁忙期は「労働保険の年度更新」「社会保険の算定基礎届」の申告時期である6~7月上旬になります。
一方、私たちのような障害年金専門の社労士事務所は、年単位で時期が定められた手続きはありません。その代わり、月末、特に偶数月の月末はとても重要な時期になります。
月末に向かって準備を進める理由
障害年金の請求方法は主に3つです。
- 認定日請求
- 初診日から1年6か月(障害認定日)から1年以内の請求
- 遡及請求
- 初診日から1年6か月(障害認定日)から1年以上経過
かつ、障害認定日に遡って受給権を発生させる請求 - 事後重症請求
- 障害認定日に遡らず、請求月に受給権が発生
このうち、❸の事後重症請求が最も多く、当社では6割程度の割合です。
事後重症請求が支給決定すると請求月の翌月から年金が支給されます。請求に必要な診断書を月末に取得した場合、翌月に持ち越さず月内で請求すれば、1か月分(5~15万円)の年金を多く受け取ることができます。月末に診断書の到着が集中すると、請求準備の業務が一気に立て込みます。
障害年金と時効の関係
年金の支給を受ける権利(支分権)は「支払期月の翌月の初日から5年経過」すると時効消滅します。(国年法第102条・厚年法第92条)支払期日は偶数月になります。
➋の遡及請求によって障害認定日に遡って受給権(基本権)が発生しますが、支分権が時効消滅している部分は障害年金を受け取ることはできません。たとえば、基本権の発生が15年前であっても支分権の時効により10年間は消滅しています。「障害年金が受け取れるのは最大5年分」いうのはこのためです。
とりわけ偶数月が重要な理由
国年法・厚年法の条文では支分権の消滅時効発生を「支払期月の翌月の初日から5年経過」を起点としています。これを表にすると以下のようになります。
請求月※ | 受け取れる年金 |
---|---|
1月・2月 | 6年前の12月分 |
3月・4月 | 5年前の2月分 |
5月・6月 | 5年前の4月分 |
7月・8月 | 5年前の6月分 |
9月・10月 | 5年前の8月分 |
11月・12月 | 5年前の10月分 |
1日に請求した場合は、前月の請求となりますが、複雑になるため省略します。
➋の遡及請求かつ障害認定日が5年を経過している場合、上の表に当てはめると、1月請求でも2月請求でも「6年前の12月分」からの年金額を受け取れます。
ところが、2月請求が間に合わず翌月の3月請求になってしまうと「5年前の2月分」からになるので、2月請求に比べると受け取れる年金額が2か月分(10~30万円)も少なくなってしまいます。
ですので、偶数月の月末は、障害年金専門の社労士事務所にとって最も重要で神経を尖らせる時期になります。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士