障害年金と精神障害者保健福祉手帳(以下、手帳)の等級判定は、どちらも「家事や身のまわりのことなど日常生活場面における援助の必要度(日常生活能力)」を評価軸としています。手帳は障害年金の等級判定ガイドラインに相当する判定基準を公開されていないものの、審査機関(都道府県)は同様の判定基準を設けていると思われます。
初診日が国民年金加入期間の方は障害基礎年金を請求します。障害基礎年金は2級以上が対象なので、障害年金と手帳は別々の制度とわかっていても手帳が3級だと障害年金を受給できるか不安になる方は多いと思います。なかには障害年金請求を諦めてしまう方もいるでしょう。
ここでは、手帳が3級でも障害年金2級を受給できる2つの理由を解説します。
①障害基礎年金2級の範囲は広い
障害厚生年金は1~3級まで設定されていますが、障害基礎年金は1~2級しかありません。2級と3級のボーダーラインの診断書は障害厚生年金だと3級に、障害基礎年金は3級にしてしまうと不支給になってしまうので2級に認定する傾向があります。誤解を恐れずに言えば、下駄をはかせてくれることがあり、障害基礎年金は同じ2級でも障害厚生年金より範囲を広くとっています。
手帳も障害厚生年金と同じく1~3級まであるので、2級の範囲は障害基礎年金の2級よりも狭くなっていると考えられます。
②診断書に対する医師の心構えが違う
手帳が3級不該当になる可能性はほとんどありません。過去にお一人だけ手帳3級不該当になった方がいらっしゃいましたが、提出した診断書を見せていただいたところ、すべて最も軽い判定項目を選択されていました。さすがに審査機関もその診断書で認定することができなかったのでしょう。
それくらい手帳の審査は緩やかなので、医師は比較的気軽に精神障害者保健福祉手帳の診断書作成に応じてくださいます。
しかし、障害年金の診断書作成については事情が異なります。障害年金が不支給になってしまうと患者さんの生活の質に直結するので、手帳の診断書のように二つ返事というわけにはいきません。通常は、障害年金を受給できる程度の日常生活状況であるか熟慮したうえでの同意であれば、障害基礎年金2級相当の診断書作成を念頭に置いている可能性があります。
仕事ができず、家事や身の回りのことに援助が必要な方であれば、障害基礎年金2級に該当する可能性が高いので請求続きを検討されることをお勧めします。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士