特別児童扶養手当の診断書(写)と障害年金の診断書
特別児童扶養手当とは、20歳未満の精神又は身体に障害を有する児童を家庭で監護する父母又は養育者に対して支給される手当です。
特別児童扶養手当と障害年金の障害等級表は同一であることから、障害年金の請求時は、新たに年金の診断書を取得せずとも、特別児童扶養手当の診断書(写)で代用できることになっています。日本年金機構の障害年金審査業務マニュアルに「特別児童扶養手当の支給対象となっていた方は、年金の診断書を省略し、特別児童扶旋手当の診断密(写)を提出することも可能である」とあります。
障害年金のために新たな診断書を取得する必要がないので、特別児童扶養手当の診断書(写)で代用することが便利に思えますが懸念点もあります。
代用の懸念点
- 地域差が大きい
- 特別児童扶養手当の等級判定は各自治体で行われています。「特別児童扶養手当(精神の障害)の認定事務の適正化に向けた調査研究(研究代表者本田秀夫・令和3年3月)」によれば、自治体ごとの認定率(1級または2級と判定される比率)は33.6%から100%でした。自治体間で等級判定に大きな差がある制度に基づいて認定された診断書(写)で代用することには不安があります。
- 診断書様式の違い
- 特別児童扶養手当と障害年金の診断書様式は大きく異なります。障害年金の診断書「日常生活能力の判定」に相当する特別児童扶養手当の診断書「日常生活能力の程度」をみると、食事(全介助・半介助・自立)など各項目3~4段階評価になっています。「自立」と「半介助」の間にある「一部介助」の状態にある場合、選択肢がないので医師はやむを得ず軽い方の「自立」を選択している可能性があります。また、評価軸が異なる診断書をどのように変換して障害年金の等級に当てはめるのかなど判定方法が不透明です。
- 年金用の診断書を求められる可能性
- 前出のマニュアルに「特別児意扶義手当の診断書の写しでも受付可能。ただし、認定不能の場合は、年金用の診断書が必要となる」とあります。役所窓口で受け付けてもらった後、日本年金機構の障害認定医が等級判定を行なう際、認定不能と判断されると、追加で年金用診断書の提出を求められます。
- 更新(再認定)
- 20歳で請求する際、特別児童扶養手当の診断書写しで代用した場合でも1~5年後に更新(再認定)はあります。その際、前回の診断書データがないので、医師が作成する障害状態確認届に時間がかかる可能性があります。また、前回の診断書との比較ができないので、同じ等級で継続受給できるか心配なまま更新の手続きをすることになります。
~まとめ~
特別児童扶養手当の診断書(写)による代用をお勧めするのは、何らかの事情で診断書の指定期間(障害認定日前後3か月以内)に医師の診察を受けられなかったケースです。何年か経過してから「20歳前傷病による障害年金」で年金請求する場合、障害認定日の診断書は取得できないので、原則として遡及請求はできません。しかし、特別児童扶養手当の診断書(写)があれば、障害認定日の診断書の代わりになるので遡及請求が可能になります。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士