もくじ
なぜ、発達障害は就労状況が差し引かれ難いのか
【前編】では、発達障害は他の精神障害に比べて就労状況が不利になり難い理由として、認定要領の違いを挙げました。
後編では、日本年金機構が公開している精神の障害に係る等級判定ガイドライン(新ガイドライン)から「なぜ、発達障害は就労状況が差し引かれ難いのか」の理由と対策について解説します。
ガイドライン〔表2〕総合評価の際に考慮すべき要素の例の④就労状況には、診査側が重視する2級認定の具体的な内容例が示されています。特に下線部分は重視されるキーフレーズです。
新ガイドライン ④就労状況 発達障害の抜粋
考慮すべき要素 | 具体的な内容例 |
---|---|
〇仕事の内容が専ら単純かつ反復的な業務であれば、それを考慮する。 | ・一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、 仕事の内容が保護的な環境下での専ら単純かつ反復的な業務であれば、2級の可能性を検討する。 |
〇執着が強く、臨機応変な対応が困難である等により常時の管理・指導が必要な場合は、それを考慮する。 | ・一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、執着が強く、臨機応変な対応が困難であることなどにより、常時の管理・指導が必要な場合は、2級の可能性を検討する。 |
〇仕事場での意思疎通の状況を考慮する。 | ・一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、他の従業員との意思疎通が困難で、かつ不適切な行動がみられることなどにより、常時の管理・指導が必要な場合は、2級の可能性を検討する。 |
【診査で重視されるキーフレーズのまとめ】(▲は重要、◎は最重要)
◎保護的な環境下での専ら単純かつ反復的な業務
「保護的な環境下」とは合理的配慮の提供を指し、「単純かつ反復的な業務」とは、例えば物流倉庫の仕分け、量販店の品出し、商業施設の清掃など手順がはっきりしている作業です。
◎他の従業員との意思疎通が困難で、かつ不適切な行動
例1:意味を取り違えたり、意見を一方的に述べたりするなど会話のキャッチボールが難しい。時に、思ったことを上手く説明することができず、手が出てしまうことがある。
例2:自分のやり方が第一優先となっているので、指導員が改善点を説明しても聞き入れず激昂してしまう。
▲執着が強く、臨機応変な対応が困難(発達障害のみ)
作業の手順や道具に強い執着(こだわり)があり、手順や道具が変更になると、不安や焦りから不安定になり作業ができなくなる。
これらのキーフレーズが適切に診査側に伝われば、就労状況が不利(下位等級決定や不支給)に扱われることを避けることができます。
ご自身の就労状況がキーフレーズに当てはまれば、診断書⑩のエ「現症時の就労状況」に記載してもらい、かつ病歴・就労状況等申立書にも盛り込みましょう。就労先の協力が得られれば、就労状況に関する第三者の意見書を準備することも有効です。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士