50代男性(神奈川県藤沢市在住)
- 傷病名
- 双極性障害
- 受給できた年金
- 障害厚生年金2級(事後重症)
- 受給年額
- 約240万円
ご依頼までの経緯
ご依頼者は、平成9年頃に仕事上の悩みをきっかけに抑うつ気分、食欲不振、不眠が出現、Aクリニックを受診し、数か月の休職を経て復職しました。
仕事量をセーブしながらの勤務でしたが、その後も再燃と寛解を繰り返し、10年以上、複数医療機関(B病院、Cクリニック)で治療を継続しました。
平成20年頃、症状が改善し、寛解状態となったことと、仕事量が増え多忙になったことから通院を中断しました。
その後、約10年間は寛解の状態が続きました。仕事では着実に昇進し、チームの中心として責任ある仕事を任され、残業や海外出張等もこなしていました。
平成30年頃、仕事量が大幅に増え、抑うつ気分や不眠の症状が再燃。10年前に通院していたCクリニックの主治医が勤務するDクリニックを受診しました。
令和2年9月頃、Dクリニックの閉院に伴い、現在のEメンタルクリニックへ転院しました。
令和2年12月より休職し、傷病手当金を受給していましたが、復職の目途が立たず、傷病手当金の期限(1年6か月)が迫っていたため現在の主治医から障害年金を勧められました。
当社での対応
「本来の初診日」と「社会的治癒を援用した初診日」の年金額を比較
障害厚生年金の年金額は初診日から1年6か月後の障害認定日までの報酬比例額で計算されます。
報酬比例額は、厚生年金の加入期間(300月未満は300月とみなす)と給与額等で決まります。
本来の初診日(平成9年)だと、加入期間は150月、当時の給与は現在ほど高くはかったため、当時の報酬比例額で障害厚生年金の金額を試算すると、約163万円(月額約13.5万円)でした。
一方、平成20年から10年間の寛解状態を社会的治癒として、初診日を平成30年とした場合、加入期間は400月、給与や賞与はそれなりに大きな金額だったため、試算は約240万円(月額約20万円)でした。
社会的治癒の証明方法を考える
平成30年が初診日とするには、「平成30年を初診日とします」と申し立てるだけでは足りず、平成20年からの10年間の寛解状態を証明する必要があります。
そこで、Eメンタルクリニックの主治医へDクリニックからの紹介状(診療情報提供書)コピーを提供していただくと、「約10年間は元気でした。」の記載がありました。
また、仕事に関しては、同一の事業所で就労継続しており、その10年間の標準報酬月額と標準賞与額は共に上限額でした。
当社で「初診日(社会的治癒)に関する申立書」を作成し、証拠資料として、Dクリニックの紹介状コピーと被保険者記録照会回答票(標準報酬月額と標準賞与額が記載されたもの)を添付しました。
結果
社会的治癒が認められ、障害厚生年金2級で受給年額約240万円の受給ができました。
本来の初診日で請求していたら、約163万円ですので、社会的治癒の援用により約77万円増額できたことになります。
社会的治癒を援用する目的は、本来の初診日だと納付要件を満たせないとき、厚生年金を初診日としたいときなどが一般的ですが、今回のケースのように年金額の増額もあります。
ただし、社会的治癒の援用は経験と知識が必要なので、手続きは専門の社労士に相談してから進めることをお勧めします。