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精神科領域で活躍するプロフェッショナル

公開日:2022/06/01
  最終更新日:2022/10/04

vol.4 クリニック外の活動:茅ヶ崎ウエストサイドクリニック 精神保健福祉士 明谷さん

精神保健福祉士 明谷 大毅さん

クリニック以外の活動について

明谷さんは、休日等の時間にも精神保健福祉士として、地域福祉のために活動されています。
連載最終回の今回は、明谷さんのクリニック外での活動についてお伺いします。

神奈川県精神保健福祉士協会について

明谷さん

まず、神奈川県精神保健福祉士協会がどういった団体なのかについて教えてください

神奈川県精神保健福祉士協会は、日本精神保健福祉士協会の神奈川支部という位置づけになり、日本精神保健福祉士協会の活動理念に沿って活動しています。
委員会の形式をとっており、広報や研修、実習指導、権利擁護、組織強化のための委員会があります。

明谷さんはどういった活動をしてらっしゃるのですか?

はい。まず、災害対策委員会に所属しています。
もしこの神奈川県で災害が起こったら、精神保健福祉はどう動くのかというところを考える委員会です。
それから、協会の会計と理事を努めています。

活動の中で印象に残っていることはありますか?

そうですね、以前は組織委員会に所属していたんです。この委員会は、神奈川県精神保健福祉士協会をどう発展していくか、魅力的な組織にしていくかを考えるのが主な活動内容ですね。
そこに所属していた2019年に、支部化を行いました。
神奈川県精神保健福祉士協会をさらに細分化し、より地域に根ざした精神保健福祉の活動ができることを目的にしています。
この支部の立ち上げがいちばん印象に残っています。

やはり同じ神奈川でも、自治体が違うと制度が違ったりもしますので、支部化をしたことでより細かく、深く活動していけるように、と考えています。
そして、会員が増えることで、精神保健の普及が進み、やがてメンタルヘルスの発展に結びつけていきたいです。

直接、当事者と関わることはあまりないのでしょうか

そうですね、権利擁護を学んだり、精神保健福祉の広報を行ったり、精神保健福祉士一人ひとりのスキルを上げることで、結果、間接的に当事者の方を支える、職能団体という位置づけになるかと思います。

 

神奈川県アウトリーチ研究会(通称:かな研)について

手を重ねる仲間のイメージ
神奈川県アウトリーチ研究会WEBサイト

アウトリーチ研究会はどういった会ですか?

支援が必要なのに受けられていない人へ、積極的に支援の手を差し伸べること、そしてそれに必要なことを研究する当事者と支援者の会です。
我々支援者だけでなく当事者も主体となっているのが、当会の特徴だと思います。この会の代表も当事者です。
ほかに所属しているのは、当事者家族、ピアサポーター、我々のような専門職です。これらの人々が同じ立場で、なにをやろうかと考えています。

アウトリーチ研究会の特徴を教えてください

やはり、常に当事者の目線をもって、物事を考えられるのが、いちばんの特徴だと思います。

研究会の内容も当事者と専門職で一緒に考えます。
病院なんかですと、どうしても「看護師と患者」というように立場が分かれてしまいます。
ですが、地域に出てみれば当事者も専門職も、地域の一員として一緒に考えることができます。

ちなみに、研究会に参加すると、リセットされた気持ちになります。
自分が精神保健福祉士を目指したときの、根本に立ち戻れるんです。

かな研の目的や理念を教えてください

当事者が住み慣れたまちでその人らしい生活ができるよう、神奈川県及びその周辺地域の精神保健福祉領域の多職種のネットワークを作ることが目的のひとつです。
その中でも大きな目標として、当事者主体で作り出す活動というものを大事にしています。

また、「誰もが無理せず、できるところから」というのを活動理念として掲げています。

活動期間はどのくらいですか?

もう10年になるかと思います。
だいたい年に2回くらい大きな研修会を実施しています。
現在は、大きな研修会はお休みになっていますが、小さな報告会などは行っています。

考え中の明谷さん

活動に関して、なにか印象に残っていることや、成果を感じたことはありますか?

参加した看護師さんが、地域での関わりをもっとしたいと考えて、事業所を立ち上げたのは印象に残っています。
当事者の方に仲間として、支援者を身近に感じてもらえているのは大きな成果かなと思います。

仲間である当事者からの声を聴く事で、今まで見えなかったニーズを把握することもできた、ということでしょうか

そうですね、そういった成果もあったと思います。

この会は「課題を挙げて、それに向かってみんなで解決を目指す」というよりは、「それぞれが自分のモヤモヤを共有して、スッキリしつつ、他の人のモヤモヤを情報として取り入れていく」という形になっています。

実は僕自身が別の病院にいた頃にずっとモヤモヤしていたんですね。医師の言うことが絶対で、これは患者さん本人のためにならないのではと思っても、口を挟めなかったりして。
そうなってきたときに、当事者の人とフラットに話せる場所が大事だなと思ったんです。
それで、当事者の悩みなどを仲間として聞ける研究会に参加しました。

まだそこまではいけていませんが、我々の活動がもっと発展して、社会の仕組みが良くなっていくといいなと思っています。

かな研はさまざまな職種の方がいらっしゃるとお伺いしました。
具体的に、どういった職業の方が参加されているのですか?

専門職ですと看護師、作業療法士、精神保健福祉士。それから、精神疾患を持つ当事者、当事者家族、ピアサポーターの方もいらっしゃいます。

ピアサポーター・ピアスタッフというのは、簡単にいうと「元当事者」で、自分の経験を活かして、当事者を支える活動をしている方を言います。
一部の相談支援事業所や作業所などでは、ピアスタッフ加算というのがついたりすることもあり、活躍の場が広がっています。

よく勘違いされるのですが、障害がある方や、障害があった方が、福祉系の職場で働くこと自体はピアの活動ではありません。
経験を活かして、当事者を支える活動をしているかどうかが大事になってきます。

医療機関の選び方

クリニックの待合室
▲クリニックの待合室にもデイケア作品が

医療機関の選び方について、精神保健福祉士の視点から、こういう点を重視するといいというものがあったら教えてください

やはり、利用者様の生活にあわせた医療機関選びがいいのではないかと思っています。
医師との相性もそうですし、通院のしやすさを考えると、自宅からの近さもひとつのポイントですね。

ただ、どれも一概には言えないんです。
最近増えてきた相談だと、大学病院に通院されている方からの「先生がコロコロ変わる」というのがあります。
何度もご自分のことを説明して、緊急で行っても先生がいない……というような問題が出てきます。
だから、大学病院はダメかというと、そんなことはなく、大学病院の強みは高度な医療だったり他の医師や専門家のコンサルが受けられたりするというメリットもあります。
そういったことが安心というのであれば、大学病院に通うという選択は、全くおかしくありません。

一方でクリニックは地域に根ざしています。内科や整形外科と同じように、行こうと思ったら気軽に行けて、もっと専門的な治療を受けたくなったら大きな病院に……というような感覚で、クリニックは選んでもらえるといいかなと思います。
そのくらい、精神科への偏見がなくなって、メンタルヘルスがもっと普及していくといいなというのが、精神保健福祉士としての想いです。

当社でも、医療機関の選び方を聞かれることがあるんですが、茅ヶ崎ウエストサイドクリニックさんのように精神保健福祉士がいるところをおすすめしています。このあたりはいかがですか?

そうですね。社会資源へのアクセス方法って、現状ではなかなか患者様がすぐ手を伸ばせるところにないように思います。
しかしそこに、精神保健福祉士がいれば、そのアクセスが楽になります。
ですから、精神保健福祉士がいるというのは、医療機関の選び方のひとつとしてあっていいと思います。

精神保健福祉士を在籍させると保険の点数が上がるといった、クリニックの収益的なメリットがあるのでしょうか?

いえ、精神保健福祉士を雇ったからといって、そこに加算される保険の点数はありません。むしろ、雇用する分のコストがかかります。

ということは、それなのに精神保健福祉士を在籍させているということは、その医療機関が患者さんのためのよりよい医療を追求していると考えるられますね。

はい。他クリニックのことを完全に言い切ることはできませんが、患者様にできることをしたいという方針があるのではないかと思います。
実際に、患者様を支える他の機関の方から、精神保健福祉士がいてくれてよかった、サポートが早くできたというようなお声をいただきます。

体感的にでかまわないのでお伺いしたいのですが、精神保健福祉士がいるクリニックというのは、どのくらいありますか?

あくまで感覚ですが、茅ヶ崎では半分に満たないのではないかと思います。
個人開業のクリニックはなかなか難しいようですね。
ただ、心理士さんがいるクリニックは増えてきたように感じます。
精神保健福祉士はやはり福祉としてイメージされる先生が多いのに対して、カウンセラーは医療の厚みとして置いてらっしゃるのではないかなと思います。
また、精神保健福祉士への相談が無料であるのに対して、カウンセリングは有料で収益になりますので、そこも心理士さんの方が優先されるポイントになってくるのかなと思います。

将来の目標

精神保健福祉士としての目標や夢はありますか?

すごく大きなことになってしまうかもしれないんですけど、精神科やメンタルクリニックなどが内科などと同じように、しんどいと思ったら行けるような立ち位置になってほしいなと思っています。
そして、精神疾患ある人は怖い、危ないって思われる偏見がない社会・地域になっていったらいいなと思っています。
まずはそんなクリニックづくりから、目指していきます。

インタビューへのご協力ありがとうございました。

精神保健福祉士の明谷さんと社労士小西 デイケアにて

今回のプロフェッショナル
明谷さん

明谷あけたに 大毅だいきさん

茅ヶ崎ウエストサイドクリニック 精神保健福祉士


本コーナーは、ユニークなアプローチで精神医療に取り組む医療・福祉従事者といった「精神科領域で活躍するプロフェッショナル」をご紹介し、メンタルの不調を抱えた方の選択肢を広げてもらおうというコンセプトのもと作成されています。
個人の紹介を目的としており、特定の医療機関への受診を促すものではありません。

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