当社では、障害年金の受給要件を満たし、ご相談者に申請代行の意志があっても、ご契約前に主治医の同意の有無を確認させていただいています。
精神障害の診断書は、記載項目が多く作成に時間がかかることに加え、診断書作成医の意志に反した結果(不支給)になることがある為、同意が得られないケースも少なくありません。
そのようなときは、状況に応じてアドバイスしますが、それでも頑なに拒まれることもあります。
そうなると、次の相談は「障害年金に理解のある医療機関を紹介してもらえますか?」といった流れになります。しかし、精神遅滞など一部の障害を除き、当社は障害年金を目的とした転院先の紹介は基本的に行っておりません。
相談者が通院しているのは、辛い病気を治すことが目的のはずです。一方、障害年金は経済的不安を軽減し、治療に専念するための手段の一つに過ぎません。
ところが、病気が影響して、心理的視野狭窄が起きてしまい、障害年金の受給が目的化してしまっている相談者も中にはいらっしゃいます。
もしかしたら、相談者の主治医は、考えがあって拒んでいるのかも知れません。過去にあった例では、相談者(Aさん)から、「B医師に障害年金の診断書を断られた」と相談を受けました。B医師は、障害年金への理解があり、患者からの信頼がとても厚い先生です。相談者から委任状を貰い、B医師に理由を尋ねてみました。すると、「Aさんはお金の使い方に課題があり、過去に失敗を繰り返してきている」、「金銭管理の支援がない状況でまとまったお金を持つと、病気を悪化させる可能性が高い」との説明でした。
障害年金業務に携わる私たちも、依頼者の期待に応えようとするあまり、「障害年金こそが依頼者にとって最大の利益」と考えがちです。しかし、障害年金そのものが病気を治すわけではなく、依頼者はこれからも病気と向き合っていかなければなりません。医師と患者の関係性や、治療プロセスを考慮し、時には障害年金手続きを中止する提案も必要になります。
ただし、一切転院を勧めないということではありません。
明確な理由もなく、診断書作成を断る医療機関や医師との信頼関係が築けていないケースでは、転院も選択肢として提案することもあります。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士