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公開日:2021/07/26
  最終更新日:2021/10/01

第6回 障害年金などの社会資源について:KOKORONEメンタルクリニック 院長 精神科医 龍田哲行先生 インタビュー

龍田哲行先生

KOKORONEメンタルクリニック院長の龍田 哲行先生へのインタビュー最終回です。
最後は障害年金などの社会資源についてお話しさせていただきました。

障害年金などの社会資源について

さがみ社会保険労務士法人のビジョン

KOKORONEインタビュー小西

龍田先生「小西さんもPSWの資格を取得されましたけど、どういう形でPSWの資格を活かしていく方針なんですか?」

小西「そうですね、福祉を違った視点で見たいというのがあります。実習などを経て感じたのが、福祉業界ではお金に関することをタブー視しているんじゃないかっていうことなんです。
例えば、胡蝶蘭を作っている特例子会社、就労継続支援B型では、福祉とは違う分野の人が関わっていて、その技術力を有効に活用して収入を確保している。そうすることで今後の可能性を広がっていくっていうのがあるんですね。
障害年金以外の手段でも、そういう人たちの金銭的な不安を払拭していきたい、というのが現時点でのビジョンです」

龍田先生「障害があっても、働き方がマッチすればある程度の収入を得られる環境があるのはすごく良いと思います」

小西「利益が還元されれば、特例子会社や就労継続支援事業所であっても、障害基礎年金の7万円がプラスであれば、将来、一人暮らしをしたり、家庭を持つことも選択肢に入ってくるんじゃないかと思います」

就労をしながら障害年金を受け取る

龍田先生「今まで一般就労で就労をしていたような人も、特例子会社で働くことはできるんですか?
イメージとして、知的障害や発達障害の人が多いイメージなんですが」

小西「確かに、特例子会社はそちらの方がメインですね。
一般的な就労をしていた方の場合は、障害者手帳を取得して障害者雇用の枠に入るということも可能です。
一定規模の企業は法定雇用率といって、43.5人に1人は障害のある人を雇いなさいというのがあるんです。なので、障害者雇用枠での就労に変われば、企業側にもメリットがありますし、本人も今の就労を継続することができるようになってくるんです。
障害年金を受け取る際には、障害者雇用ですよ、あるいは障害者雇用と同等ですよというのを証明しなければならないので、我々が証明書を取ったりという形でお手伝いをします。

我々は障害年金というお金に関わる分野にいるので、金銭的な不安がある方からの問い合わせが多くなってくるわけなんですが、クリニックの患者さんの悩みとして、金銭的な不安というのは多いんでしょうか?」

中村さん「はい、経済的な悩みは多いし、大きいです。
クリニックは自立支援医療制度の対象医療機関なので、利用すれば医療費が3割から1割負担になります。継続的な通院を考えられている方は、そのあたりも利用していただきたいです」

障害年金受給をサポートする側の不安のこと

KOKORONEメンタルクリニック龍田先生
龍田先生「患者さんの金銭的負担を軽減させてあげたいというのは、僕も一致しているんです。生き生きと生活してほしいけど、不安が大きすぎちゃうとなかなかそういうふうになれないので。
寛解が見込める疾患の場合であれば、病状がしんどい間はアシストがあって、金銭的な不安が解消されることで元気になって、働けるようになってほしい。障害年金が停止になるくらい良くなってほしいと思っています。
ただ、中には障害年金のために、病気でいようとする人が一定数いるように感じるんです。
小西さんは、年金受給をしたいと言われればどんな人でも、受け付けるわけではないっておっしゃっていましたが、そのあたりはどうなんですか?」

小西「そのあたりは、先生も感じられるんじゃないかと思うんですけど、なんとなく違和感があるんですよね、お話しているときに。
そういった方は、やんわりとお断りさせていただいています。
もちろん、お断りする理由は他にもあります。たとえば、現時点で障害状態に該当しない方の請求を無理やりすると、不支給になったうえ、該当するほど悪化した際の審査に影響してしまう、というようなケースです。
逆に、診断書が軽くても、実際はもっと重たそうだなと感じればお引き受けしています」

龍田先生「そうですね。そういう情報がなくて、軽く書きすぎて通らなくなるケースはあるんじゃないかと感じます
本人の日常生活の細かい部分だったり、職場での状況を現場の人から聞くというのは、さすがに僕たちではできないので、小西さんたちの作る資料は、すごく役に立っています。」

問診のための事前資料のこと

▼診療室での説明風景
KOKORONEメンタルクリニックでの説明シーン
小西「特に知的障害の方は、あまり定期的な通院をされていないですから、1回の診察だけで診断書を作成するというのは、先生方にとってもハードルが高いと思うんですよね。本人も緊張しているので、ヒアリングがなかなか難しい。
先生の診察に同席させていただくと、世間話から入ってリラックスムードを作ってからヒアリングというふうにされているように感じます。
そのあたりも、患者さんの支持を得られるところなのかなと」

龍田先生「それは小西さんたちの事前資料が手元にあるのが大きいです。
僕たちが同じ情報をこれから入手しないとってなると、どうしても世間話をしている時間が削られてしまうので」

小西「それは嬉しいですね。我々の下準備が、診察のお役にも立てているのであれば、嬉しい限りです」

「医師」の前の患者さんのこと

──ヒアリングをしてると案外多いのが、「医師の前だと、良いことばかり言ってしまう」とか「嫌われたくなくて本当のことを言えなかった」といった声です。
我々が医師でも医療関係者でもないからこそ、逆に聞けることもあるのかな、と感じることがあります。

小西「怒られてしまうかも、と思うようですね」

龍田先生「精神科医が白衣を着てるのも、僕から見ると謎なんですよね。なんのために着てるのかなって、暑いだけだし(笑)
あれ1枚着て登場するだけで、途端に患者さんは身構えたりするじゃないですか」

小西「そういうことも考えて、白衣を着ないようになさってるんですね」

KOKORONEメンタルクリニックのシャツ
▲落ち着いた色合いのシャツです。

龍田先生「精神科だと血液が飛んだりっていうのは皆無なので、そのあたりも病院らしくする必要はないかな、というのがあります。
メンタルが良くなる環境が提供できる場があって、その敷地の中にたまたまクリニックもあるくらいの認識でもいいんじゃないかなと思ってるくらいです(笑)」

障害年金の受給はゴールではない

──障害年金をもらいながら働くという手段についてはどう思われますか?

龍田先生「年金をもらいながら働くことで、年金を確保するためにフルタイムで働かないといった、年金のための働き方になってしまうのでは、という懸念がちょっとあります」

小西「我々としては、病気になったとき、『無理して働かないといけない』と『無収入になって路頭に迷うしかない』という極端な選択だけでなく、年金をもらいながら、無理のない範囲で働くという真ん中の道もあるよということで、就労継続を勧めることがあります」

──障害年金の受給はゴールではなく、治療のための手段のひとつである、ということを我々としても伝えていきたいなと思います。
ありがとうございました。

KOKORONE記念撮影

今回のプロフェッショナル
龍田先生

龍田たつた 哲行てつゆき先生

KOKORONEメンタルクリニック 院長
精神保健指定医
Cafe & YOGA mental studio KOKORONE オーナー


本コーナーは、ユニークなアプローチで精神医療に取り組む医療・福祉従事者といった「精神科領域で活躍するプロフェッショナル」をご紹介し、メンタルの不調を抱えた方の選択肢を広げてもらおうというコンセプトのもと作成されています。
個人の紹介を目的としており、特定の医療機関への受診を促すものではありません。
また、障害年金への理解がある医師だからといって、実際の症状にそぐわない診断書を作成することはありません。
障害年金の受給だけを目的に受診し、事実と異なる診断書の作成を求めるようなことは行わないでください。

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