今回も引き続きKOKORONEメンタルクリニック院長の龍田 哲行先生にお話をお伺いします。
第1回と第2回は開業について、第3回、第4回では施設についてインタビューをご紹介しました。
今回は先生とスタッフさんについてお伺いしていきます。
今回のインタビュアーは小西です。
スタッフさんについて
──PSWの中村さん以外のスタッフさんは、前病院での患者さんだそうですね
龍田先生「はい、そうなんです。僕たちの仕事や、小西さんたちの仕事もそうですけど、患者さんに対して『もうちょっと社会に出てね』とか『疾患を抱えても仕事ができるようになってほしい』っていうのを、患者さんには言うじゃないですか。
でも、おそらく病院のスタッフ募集で素直に『自分はうつ病で通院しています』って言ったら、採用しないんだろうなっていう。
前の病院で話してても、『よその病院で薬をもらってます』みたいな人はいっぱいいたんですよ。
自分たちが患者さんに、社会に出るよう促すのに、自分たちはそこでフィルターをかけるのかっていう疑問があったので、じゃあ、自分のところで働いてもらうスタッフは、自分の患者さんで、やりたいことに賛同してくれる人を採用しようとなりました。
これが正解と判断されるかどうかは僕には分からないです。一般募集をかけて良い人が来てくれる可能性はあるだろうと言われるかもしれません。
でも、僕はそれがいいと思っただけなので」
──PSWの中村さんはクリニック内でどういったお仕事をされているんでしょうか?
中村さん「制度や社会資源についての相談はもちろん、患者さんやご家族が安心して診察を受けられるよう、ドクターとの橋渡しを行う役割を担っています。
ただ、PSWのいるクリニックがあまりないせいか、まだ何をする人なのかというのが認知されていないなという感覚があります。
本当はもっと軽い相談もしていただいて構わないんです」
──病院にいたときと役割の違いはありますか?
中村さん「そこは、全然違いますね。病院とクリニックっていうのがまず大きく違いますし。
病院だと入院患者さんがいるので、行政と家族との連絡役とか、必要な手続きのために行くという感じでした。あとはそのあたりの相談役ですね。」
──こんなふうに利用してほしいというのはありますか?
中村さん「私としては、精神科受診のハードルをもっとラフにしたいと思ってるんです。
なので、『これくらい受診するほどでもないかな』とか『こんなこと先生に相談していいのかな』みたいなことを、まずは私に相談してもらえればいいなと。
私に聞く分にはお金がかからないので(笑)
あとは、患者さんがドクターと話しやすくなるためのワンクッションとして、頑張りたいなと思っています。」
▲PSWの中村さんには、専用の部屋で相談可能です。
──中村さんは前の病院に入って2,3年のときに、龍田先生からお話があって、お一人だけ手を挙げたわけですが、最初どうでしたか?
中村さん「まず最初は、先生が変わったなって思いました。入ったときから、お話をもらうまで、実はそんなに話をしたこともなかったんです。
『先生』なので、近寄りがたかった(笑)
だから、仕事の話しかしたことなかったんですよ」
──今からは全然想像できないですね
龍田先生「ほんとうにそうですね。以前の僕は、診察の合間はずっと医局でパソコンに向かってる感じでした。
でも、意識が変わってからは、暇があったら知識を得るための本をずっと読んでいました。あるいは、メンタルのために体を動かすとか」
中村さん「いちばん最初のきっかけは、なんだか分からないけど、先生が変わったなっていうところでした。そのあと、先生が外来とかでメンタルの話をしてるよというのを看護師さんから聞いて、話を聞きに行きました。
病院内だと、PSWってあくまで提案する人であって、助言とかアドバイスをする人ではなかったんです。選択肢を広げはするけど、この中でどれが合ってますよとかは言えないという感じで。でも、あまりそれがしっくり来ていないところがありました。
医師ではないので、薬は出せないし、治療もできないんですけど、もっと“こういうふうになれるといいよね”って部分を伝えることはできるんじゃないかと思って、ぜひやりたい、と申し出ました」
▲(左から)PSW中村さん、龍田先生、小西
──なるほど、ご自身のやりたいソーシャルワークが実現できそうだな、と感じられたんですね
中村さん「そうですね。もっといい伝え方だったり、患者さんたちが良くなるための手伝いを、ソーシャルワークで社会資源を伝えるだけでなく、さらにプラスアルファでできるんじゃないかと思いました。
ソーシャルワーカーってだいたい、親身に話を聞くだけで終わってしまうので、”計画を立てて、ではその計画をどんなメンタルでやっていくのか”を今までは全然伝えられていなかったなと思います」
先生のキャラクターについて
先生のキャラクターが以前と違う?
──私がいちばん最初にお話させていただいた4年前、ちょうど新ガイドラインになった頃で、緊張しながら診断書の内容を再考してくださいとお願いに上がったとき、すぐ「いいよ」っておっしゃっていただけて、救われたことがありました
龍田先生「そうなんですね。全然意識していませんでした(笑)」
──診断書記入の基準についてご説明したら、どう書けば患者さんの障害状態が適切に伝わるのかというのを聞いてくださって。
どうしてそれほど親身に対応してくれるのかを恐る恐る聞いたら、『他の先生は違うの?』って不思議がっていらっしゃいました。
そのあと、パンを売りに来た障害者施設の方と10分くらいお話されていて。そういうところでもコミュニケーションをとったり、色々考えてらっしゃるんだなと感じました。
龍田先生「そうすると、小西さんと会ったのは、僕が色々意識し始めてからなんですかね。これがもし、その前だったら、どういう対応しちゃってたのかな。
ひょっとしたらこのインタビューもなかったかもしれない……」
──そのあとも、たまたま当社にご依頼いただくことの多い施設が病院の近くにあったので、そこから何回もお世話になりました。
龍田先生「そうですね、ちょうど土曜日の初診を僕が13年くらい担当していて、土曜日の午前中は年金審査のための検査枠が多かったからですね。
どれもたまたまなんですけど、そこからなんだかんだでずっと小西さんと関わらせてもらってますよね」
──はい、お世話になっています。今まで、このクリニックや先生を紹介したみなさん喜んでくださってるんです。
駅前ではないですけど、車がない人でも『全然通います』っていう感じで
龍田先生「こちらこそ助かっています。やっぱり僕たちだけで、小西さんたちが作成するような資料を作ろうとすると、かなり大変なので」
──そう言っていただけると嬉しいです
メントレの適応範囲について
──先生のメントレは割と広い範囲に適応できるのでしょうか
はい。プログラムの内容はイラストを多く使っているので、発達障害や知的障害の子でも、ある程度会話ができる軽度の子であれば、理解してもらえるようになっています。
そもそも、知的障害の場合は、薬を出して良くするっていうケースはごく一部なんですよね。
じゃあ、それ以外の人が自分のメンタルを良くしたり、衝動性や感情をコントロールするにはどうしたらいいのかっていうコツを伝えるには、診療の時間だとどうしても短くて伝えきらないんです。
なので、クリニックとは別に「そういうスキルを身につけたい」っていう人に提供する場を設けています。
──それがスタジオの方のプログラムなんですね
結局、自分のメンタルを安定させるための知識とかって、患者さんだけに身につけてもらいたいものじゃないんです。
今は問題ない方も、患者さん側にならないために、もっと早めに知ってもらえたらいいなというのがあります。
なので、対象を患者さんだけっていうふうにしたくなくて、いわゆる保険診療の枠組みの中だとできなかったんですよね。
本コーナーは、ユニークなアプローチで精神医療に取り組む医療・福祉従事者といった「精神科領域で活躍するプロフェッショナル」をご紹介し、メンタルの不調を抱えた方の選択肢を広げてもらおうというコンセプトのもと作成されています。
個人の紹介を目的としており、特定の医療機関への受診を促すものではありません。
また、障害年金への理解がある医師だからといって、実際の症状にそぐわない診断書を作成することはありません。
障害年金の受給だけを目的に受診し、事実と異なる診断書の作成を求めるようなことは行わないでください。