横浜オフィスの黒川です。
5月13日の社会保険審査会を控えた4月30日に厚生労働省年金局事業管理課から、「保険者(政府)が申立日を初診日として認めることができないため却下とした決定を変更し厚生年金2級の支給と認める」旨の(保険者による処分変更)連絡がありました。
ご依頼者は町田市在住のA様で、初診日が認められず却下になっていました。
初診の医療機関であるBクリニックに受診状況等証明書の依頼をしたところ、「5年以上前でカルテはないが、病名と日付は分かるので」とお引き受けいただけました。
しかし、その際に書いていただいた書類は受診状況等証明書ではなく、初診日と病名が記載された「クリニック独自の診断書」でした。料金は診断書代としてかかりました。
このままでは提出書類が揃わないので、受診簿の写しをいただきたいとお話ししたところ、「これはクリニックの情報で提供することはできない」とのお返事でした。
初診日である東京のBクリニックはメンタルクリニックですので、受診簿で確認できれば、問題なくメンタル系の初診日として認められると考えたのですが、それが厳しくなってしまいました。
次にかかった医療機関は内科で、依頼者はかかりつけで胃腸の処方をされており、経済的な問題から2箇所への通院は厳しいとのことで、内科にてBクリニックで処方されてうた抗うつ剤も処方してもらうことになりました。
ご本人が薬を覚えていて、特に書面やお薬手帳もありませんでした。
ここにも受診状況等証明書の依頼をしましたが、前医のことは記載されておりませんでした。
そのため、受診状況等証明書を添付できない申立書に、Bクリニックの「独自の診断書」を添付しましたが、この診断書は認められませんでした。
再度、受診簿の写しをいただけるよう何度もBクリニックにお願いに行き、年末も最後の受診までお待ちしておりましたが、医師は頑なに受け付けてくれませんでした。
何とか、当時の取引先の方に連絡をとり、第三者証明を記載いただきました。1人しか見つかりませんでしたが、これも提出し、クリニックには受診簿があるが、クリニック側が拒んでいる旨を強く訴えました。
審査請求の謄本は、棄却でした。その後、再審査請求の申立てをしたところ、送付されてきた通知には、Bクリニックの受診簿が添付されておりました。審査側の方でクリニックに提出を求めた依頼文書があり、医師は提出しておりました。
Bクリニックの院長は、政府からの提出依頼をすんなりと受け入れておりました。
これにより初診日の証明が確実となりました。
今回の請求では下記2点を実感いたしました。
◎病院独自の診断書は信ぴょう性がないと判断される。(これは会社用に医師が融通を利かせて書く場合もあるため)
◎社労士や依頼者に情報を提供してくれない病院は、保険者(政府)からの要請であれば医師は素直に提出する。
本来、患者本人からの情報開示はごく一部の例外を除き、その求めに応じなければならないと、個人情報保護法で定められています。
障害年金を請求する患者にとっては、大きな情報なのですが、そんなの知ったことではないという対応をする医師が存在します。
もちろん、ほとんどの医師・医療機関は法律に基づいた対応をしてくださり、このような医師はわずかです。
ご依頼者に朗報をお届けできたことが嬉しい一方で、どうしてそこまでして受診簿の提供を拒みたかったのか、疑問の残る事例でした。
- 黒川
- さがみ社会保険労務士法人
横浜オフィス マネージャー- 社会保険労務士・社会福祉士・両立支援コーディネーター